【追悼】2023 (36/141)

「スーパー歌舞伎」の生みの親で、三代目市川猿之助として宙乗りや早変わりなどのケレンを取り入れた舞台で人気を集めた歌舞伎俳優の市川猿翁(いちかわ・えんおう、本名喜熨斗政彦=きのし・まさひこ)さんが13日、不整脈のため東京都内で死去した。83歳だった。東京都出身。 三代目市川段四郎の長男で、1947年に7歳で市川団子を名乗って初舞台。63年に三代目猿之助を襲名した。 68年に「義経千本桜 川連法眼館」の狐忠信で宙乗りを行い、当たり役になった。宙乗りは「猿之助歌舞伎」の代名詞となり、5000回を達成した際にはギネスブックに登録された。 復活通し狂言や古典の新演出に加え、新作歌舞伎の創造に意欲的に取り組んだ。86年、「古事記」を基にしたスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」を初演し、大ヒット。その後も次々と「オグリ」「新・三国志」シリーズなどのスーパー歌舞伎を作り、演出・主演した。 2003年に脳梗塞を患い、療養生活に入ったが、12年6月の公演で一時復帰。猿之助の名跡を当時市川亀治郎だったおいの四代目猿之助被告(両親への自殺ほう助罪で起訴)に譲り、自身は二代目猿翁を襲名した。同時に長男の俳優、香川照之さんが九代目市川中車として歌舞伎界入りし、孫の五代目市川団子さんが初舞台を踏んだ。 13年末の公演が最後の舞台になった。00年紫綬褒章、10年文化功労者。写真は11年9月撮影 【時事通信社】