【追悼】2023 (8/141)

「ふぞろいの林檎(りんご)たち」「岸辺のアルバム」など数々のテレビドラマを手がけた脚本家で作家の山田太一(やまだ・たいち、本名石坂太一=いしざか・たいち)さんが11月29日、老衰のため川崎市の施設で死去した。89歳だった。 東京・浅草生まれ。早稲田大卒業後、1958年に松竹大船撮影所に入り、木下恵介監督に師事。65年に退社し、脚本家としてテレビの世界に入った。 鶴田浩二さん演じる元特攻隊員の警備員と戦後生まれの若者のぶつかり合いを描いた「男たちの旅路」シリーズ(76〜82年)、中流家庭の崩壊を描き「辛口ホームドラマ」のジャンルを確立した「岸辺のアルバム」(77年)など、市井の人々の日常を通じて社会問題をあぶり出す名作を生み出した。 就職や恋愛に悩む“四流大学生”の青春群像劇「ふぞろいの林檎たち」(83年)は、同世代の若者の共感を呼び、97年のパート4まで続く人気シリーズに。NHK大河ドラマ「獅子の時代」(80年)も話題を集めた。 近年では、東日本大震災で被災した家族の明暗を描いた「時は立ちどまらない」(2014年)を発表するなど、意欲的に創作を続けた。 向田邦子賞を受賞した自身のドラマ「日本の面影」(84年)を戯曲化した舞台や、篠田正浩監督「少年時代」(90年)などの映画脚本も手掛けた。 作家としても活躍。「異人たちとの夏」は88年に山本周五郎賞を受賞し、映画化。エッセー集「月日の残像」で14年の小林秀雄賞を受けた。82年に芸術選奨文部大臣賞、85年に菊池寛賞受賞。写真は92年撮影 【時事通信社】