【追悼】2023 (3/141)

欧州共同体(EC)から欧州連合(EU)への移行や欧州単一通貨ユーロの導入などを推進したフランスの政治家で元欧州委員長のジャック・ドロール氏が12月27日、パリの自宅で死去した。98歳だった。1985〜95年の10年間にわたって委員長を務め、欧州統合で強い指導力を発揮した。 25年パリ生まれ。45年に仏銀行(中央銀行)入りし、頭角を現す。69年、シャバンデルマス仏首相顧問となり、79年に欧州議会議員に当選。81〜84年にはミッテラン大統領の下で経済・財政相を務めた。 85年、EC委員長(現在の欧州委員長)に就任すると、単一欧州議定書やマーストリヒト条約の発効に尽力。92年の域内市場完成、93年のEU発足、共通外交・安全保障政策の創設を実現させ、99年のユーロ導入に至る経済通貨統合に道筋を付けた。 半面、連邦主義的な統合を批判しEU各国の主権を重視したサッチャー英首相(当時)とは、たびたび対立した。 95年に委員長を退任。同年の仏大統領選挙では、社会党候補として名前が挙がったが固辞した。2012年まで同党第1書記(党首)を務めたマルティーヌ・オブリ氏は娘。 ドロール氏の訃報を受け、フォンデアライエン欧州委員長はX(旧ツイッター)で「欧州をより強固にした先見の明がある人物だった」と追悼。欧州委は「彼のレガシー(遺産)を守るため、われわれは運命共同体として、より強力な連合に向けて取り組んでいく」と表明した。写真は1992年撮影 【AFP時事】