【追悼】2023 (10/141)

1960年代末から70年代のニクソン、フォード米政権時代に大統領補佐官(国家安全保障担当)、国務長官を相次いで務め、米中和解やベトナム戦争終結に貢献したヘンリー・キッシンジャー氏が11月29日、東部コネティカット州の自宅で死去した。100歳だった。米メディアが伝えた。 キッシンジャー氏は政権から離れた後も、積極的に言論活動を行い、歴代政権の外交政策に大きな影響を及ぼした。今年7月に北京の釣魚台迎賓館で習近平国家主席と会談するなど、中国側の信頼が厚かった。 23年5月27日、ユダヤ人の両親の下にドイツで生まれた。ナチスの迫害を逃れて38年に一家で米国に移住。54年にハーバード大大学院で欧州外交史を研究し、国際秩序の維持には力の均衡が重要と結論付ける論文で博士号を取得。その後も「核兵器と外交政策」などの論文を発表し、外交専門家としての地位を確立した。 69年1月、ハーバード大教授からニクソン政権(当時)の大統領補佐官に就任。大統領密使として71年7月に中国を極秘訪問、ニクソン電撃訪中(72年2月)のおぜん立てをした。沖縄返還合意の際の有事の核再持ち込みを巡る交渉にも関与した。 中ソ対立を利用して米中和解を図る一方で、ソ連に対しデタント(緊張緩和)政策を進め、第1次戦略兵器制限条約(SALT1)締結でも貢献した。73年9月には国務長官に就任。ベトナム和平協定締結に尽力した功績で同年のノーベル平和賞を受賞した。写真は20年1月撮影 【EPA時事】