【追悼】2023 (70/141)

イタリア有数の富豪で、1990年代に「メディア王」から政治家に転じ、戦後最長の通算9年にわたり首相を務めたシルビオ・ベルルスコーニ氏が6月12日、北部ミラノ市内で死去した。ANSA通信などが伝えた。86歳だった。白血病を患い入院していた。愛国主義的主張で国民の支持を獲得し、イタリア政界の実力者として君臨する一方、数々のスキャンダルも起こした。 1936年、ミラノの中流家庭に生まれた。法律を学んだ後、60年代から本格的に建設事業を手掛け、旺盛な住宅需要に支えられて財を成した。70年代前半にミラノでケーブルテレビ会社を興したのを皮切りに、テレビ局を次々と買収。名門サッカーチームのACミランも買収して強豪に育て上げた。 94年、事業で培った資金力や人脈を生かし、中道右派政党「フォルツァ・イタリア」を結成。冷戦崩壊に伴い暴かれた度重なる汚職事件で高まった既成政党への不信感を背景に、結党直後の総選挙で第1党に躍進し、首相に就任した。 政権は1年足らずで崩壊したものの、2001年に返り咲き、06年までと08〜11年の計3回首相を務めた。強力なリーダーシップを発揮し、乱立状態だった右派の小政党を糾合。「長く続いた政治の混乱収束に貢献した」と評価された。半面、マフィアとの癒着や汚職など数々の疑惑が取り沙汰され、10年には未成年買春疑惑も浮上。13年には脱税での有罪確定を受け、議員資格を剥奪された。 歯に衣(きぬ)着せぬ発言でたびたび物議を醸し、女性蔑視や人種差別的な失言も相次いだ。03年のイラク戦争では、戦争を主導したブッシュ(子)米政権を支持。ロシアのプーチン大統領と親しいことでも知られた。 昨年10月に発足したメローニ右派連立政権を支えるなど、晩年まで影響力を保持したが、最近は体調を崩して入退院を繰り返していた。今年4月上旬には慢性の白血病に伴う肺感染症で入院。5月中旬に退院後、今月9日に再入院していた。写真は19年5月撮影 【AFP時事】