【追悼】2021 (200/209)

「ABCの本」「旅の絵本」など独創的な絵本や風景画で人気を集めた画家の安野光雅(あんの・みつまさ)さんが昨年12月24日、肝硬変のため死去した。94歳だった。島根県出身。 戦後、山口県で代用教員になり、上京後、小学校の美術教員を経て1961年に画家として独立。68年、当時は珍しかった文章のない絵本「ふしぎなえ」で絵本作家としてデビューした。 エッシャーのだまし絵のような造形でアルファベットを描いた「ABCの本」、想像力を刺激する「さかさま」など、遊び心に富んだ独自の作風を確立し、多くのファンを獲得。「旅の絵本」は世界各地を舞台に繊細な筆遣いで旅の楽しさを描いてシリーズ化された。 その作品は海外でも評価され、84年には「児童文学のノーベル賞」といわれる国際アンデルセン賞を受賞した。 温かみのある淡い水彩画でも知られ、司馬遼太郎の紀行文「街道をゆく」の装画や多くの風景画を生み出した。古典にも題材を求め、「繪本 平家物語」「繪本 三國志」を残した。 科学・数学・文学など幅広い分野に造詣が深く、森鴎外訳「即興詩人」の口語訳やユーモラスなエッセーなど多岐にわたる文筆活動でも多くの世代に支持された。 88年に紫綬褒章、2008年に菊池寛賞、12年に文化功労者。写真は2012年撮影 【時事通信社】