【追悼】2020 (32/186)

素粒子ニュートリノの観測に成功し、2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊(こしば・まさとし)東京大特別栄誉教授が11月12日夜、死去した。94歳だった。愛知県出身。 1951年、東大理学部卒。米国留学を経て58年に東大助教授、70年に同教授。87年に定年退官した後、東海大教授などを経て05年に東大特別栄誉教授。 岐阜県飛騨市・神岡鉱山地下に、3000トンの水を蓄えた観測装置「カミオカンデ」の建設を提唱し、83年に完成させた。当初の目的は素粒子物理学のテーマの一つ「陽子崩壊」の観測だったが、小柴さんは宇宙から飛来するニュートリノの検出に使えると考え、装置を改良した。 ニュートリノは理論的に存在が予測されていたが、あらゆるものを通り抜けるため観測が難しかった。小柴さんはニュートリノが水の分子と衝突した際、ごくまれに生じる光を捉えようと試みた。 87年1月、カミオカンデで観測を開始。翌2月、地球から17万光年離れた大マゼラン星雲で起きた超新星爆発で生じたニュートリノの観測に成功した。小柴さんが定年退官する1カ月前だった。 カミオカンデの後継装置で、5万トンの水を蓄え96年に観測が始まった「スーパーカミオカンデ」では、梶田隆章・東大宇宙線研究所長らがニュートリノに質量があることを確認した。梶田さんは恩師の小柴さんに続き、15年にノーベル物理学賞を受賞した。写真は2014年撮影。 【時事通信社】