【追悼】2020 (169/186)

芥川賞作家で、「内向の世代」を代表する古井由吉(ふるい・よしきち)さんが2月18日、肝細胞がんのため東京都世田谷区の自宅で死去した。82歳だった。東京都出身。 古井さんは東京大大学院修士課程を修了(ドイツ文学専攻)。金沢大や立教大で研究、翻訳などを手掛ける傍ら、デビュー作「木曜日」を執筆。70年に専業作家に転じた。71年、精神を病んだ女性と出会った男の内面を幻想的に表現した「杳子(ようこ)」で芥川賞を受賞。 黒井千次や故小川国夫らとともに、当時の学生運動など政治的活動に距離を置く「内向の世代」の代表作家とされる。自らの心情に深く入り込むような独特の文体が高い評価を受け、83年「槿(あさがお)」で谷崎潤一郎賞、90年「仮往生伝試文」で読売文学賞、97年「白髪の唄」で毎日芸術賞を受賞。86〜2005年には芥川賞選考委員を務めた。 晩年になっても創作意欲は衰えず、老いや忍び寄る死の影に思いをはせた作品の執筆を続けた。熱心な競馬ファンとしても知られ、競馬に関するエッセーなども執筆した。写真は19年2月撮影 【時事通信社】