【追悼】2020 (164/186)

日本の不条理劇の第一人者で、「象」「マッチ売りの少女」などで知られる劇作家の別役実(べつやく・みのる)さんが3月3日午前0時12分、肺炎のため東京都杉並区の病院で死去した。82歳だった。中国・新京(現長春)生まれ。葬儀は親族のみで済ませた。 不条理劇の創始者とされるフランスの劇作家サミュエル・ベケットの影響を受け、早稲田大在学中に劇作を開始。演出家の鈴木忠志さんらと出会い、「新劇団自由舞台」(後の早稲田小劇場)を旗揚げし、広島の被爆者をモチーフにした「象」で注目された。 「マッチ売りの少女」「赤い鳥の居る風景」で1968年に第13回岸田国士戯曲賞受賞。同年、同劇場を退団し、文学座などに戯曲を提供。童話やエッセーも多数手掛けた。 時代を鋭く読み解き、電柱とベンチがあるだけの簡素な舞台に日常の不条理を浮かび上がらせる独特の作風で知られた。童話をモチーフにした「ジョバンニの父への旅」、実際に起きた事件から着想した「木に花咲く」、子ども向け作品や人形劇なども含め140本以上の作品を発表した。 晩年はパーキンソン病と闘いながら劇作を続けた。日本劇作家協会会長、兵庫県立ピッコロ劇団代表も務めた。写真は2015年3月撮影 【時事通信社】