【追悼】2020 (22/186)

1948年に熊本県人吉市で一家4人が殺傷された「免田事件」で、日本の裁判史上初めて死刑確定後に再審無罪となった免田栄(めんだ・さかえ)さんが12月5日午前、老衰のため福岡県大牟田市内の高齢者介護施設で死去した。95歳だった。熊本県出身。 48年12月、人吉市の祈とう師一家4人が何者かに襲われて両親が殺害され、子供2人も重傷を負った。49年1月、警察は免田さんを別件で逮捕。その後、強盗殺人容疑で再逮捕し、激しい取り調べの末、犯行を「自白」させた。 免田さんは公判途中から否認に転じたが、一審熊本地裁八代支部は50年3月、死刑を言い渡し、最高裁が51年12月に上告を棄却、確定した。 しかし、6回にわたる再審請求の末、79年9月に福岡高裁が再審開始を決定。検察側の特別抗告も棄却されて再審が始まり、83年7月、熊本地裁八代支部は再審公判の判決で、免田さんのアリバイを認めて無罪を言い渡した。免田さんは判決直後に釈放。逮捕から34年以上が経過していた。 無罪確定後は、他の確定死刑囚らの再審支援に奔走し、死刑制度廃止を訴えた。免田さんの無罪をはじめとして、80年代には財田川、松山、島田各事件で確定死刑囚の再審無罪が相次いだ。 釈放後に知り合った玉枝さん(84)と結婚し、畑作業が日課だった。2018年から介護施設で生活。玉枝さんによると、最近はほとんど会話できなかったという。写真は2019年9月撮影 【時事通信社】