【将棋】史上最年少プロ棋士・藤井聡太 (7/248)

将棋の叡王戦終局後、感想戦に臨む藤井聡太七冠(手前右)と伊藤匠・新叡王(同左)=2024年6月20日、甲府市内のホテル【時事通信社】 圧倒的な強さでタイトル戦連覇記録を塗り替え続けてきた藤井聡太八冠(21)。七冠への陥落は当分起きそうにないというのが大半の見方だったが、絶対王者が独占する一角が崩れた。 藤井七冠は、4月の叡王戦第2局で伊藤匠七段(21)に敗れ、タイトル戦の対局連勝記録が故大山康晴十五世名人の歴代1位にあと一歩の16で止まった。一つ負けただけで話題になったが、勝負は最終局にもつれ込み、初の「失冠」に至った。 叡王戦第3局の勝負の分かれ目。藤井七冠が93手目に8七銀と指すと、将棋AI(人工知能)の形勢判断は藤井優勢から一気に逆転し、連敗を喫した。 分かりやすい解説で将棋ファンに親しまれている遠山雄亮六段(44)は、この局面をAIで調べた。「正解手順は極端に難しく、広い砂漠の中で埋もれた宝石を探すようなものだった。伊藤さんの指す将棋のレベルがものすごく高いので、藤井さんもミスが出てしまった」と説明する。 伊藤叡王の活躍は目覚ましい。昨年度は竜王戦と棋王戦の挑戦者に。最多対局賞や最多勝利賞、独創的な指し手に贈られる升田幸三賞にも輝いた。 遠山六段が「棋士が集まる部屋をいつ見ても、練習将棋を指している」と言うように研究熱心で知られる伊藤叡王。師匠の宮田利男八段(71)も「本当に将棋漬けの毎日。藤井さんに勝っても驚きはない」と言い切る。 伊藤叡王が18歳目前でプロ入りする際、宮田八段は祝いの場などで「25歳までは酒もばくちも絶対駄目」と厳命したという。「野球で言えば、投手の球が一番速くなる時期。遊びを覚えて伸び悩んだ棋士はたくさんいるが、伊藤は教えを守って桁違いの努力をしている」と目を細める。 「八冠独占が何年も続く方がおかしい。伊藤はその後を追う1番手」と語る宮田八段。将棋界の絶対王者を脅かす強力なライバルが登場した。◆年表で振り返る「藤井聡太棋士の快進撃」◆