【追悼】2022 (43/150)

戦後日本の前衛音楽をけん引した作曲家でピアニストの一柳慧(いちやなぎ・とし)さんが10月7日午後0時37分、東京都内の病院で死去した。89歳だった。神戸市出身。 1949年、51年の毎日音楽コンクール(現日本音楽コンクール)作曲部門で1位となり、米ニューヨークに留学。芸術家のオノ・ヨーコさんと結婚(後に離婚)し、作曲家のジョン・ケージさん、振付家のマース・カニングハムさんらと前衛的活動を繰り広げた。 61年に帰国し、ケージさんの「偶然性の音楽」や図形楽譜の利用など世界最先端の潮流を紹介。音楽の枠を超え、芸術界に大きな影響を与えた。80年代からは日本の伝統音楽も積極的に取り入れ、国立劇場からの委嘱作品も手掛けた。 神奈川芸術文化財団芸術総監督などを歴任、2015年には交響曲第9番「ディアスポラ」を初演し、80歳を過ぎても旺盛な創作活動を続けた。 代表作にピアノ協奏曲第1番「空間の記憶」、交響曲「ベルリン連詩」、オペラ「モモ」「愛の白夜」など。 尾高賞やサントリー音楽賞、毎日芸術賞のほか、85年にフランス芸術文化勲章、99年に紫綬褒章、05年に旭日小綬章を受けた。08年に文化功労者に選ばれ、18年に文化勲章を受章。写真は18年撮影 【時事通信社】