【芥川賞・直木賞】受賞作家 (30/105)

芥川賞受賞が決まり、記者会見で笑顔を見せる沼田真佑さん=2017年7月19日、東京都千代田区【時事通信社】 第157回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が19日夕、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞は沼田真佑さん(38)の「影裏(えいり)」(文学界5月号)、直木賞は佐藤正午さん(61)の「月の満ち欠け」(岩波書店)にそれぞれ決まった。 沼田さんはデビュー作、初候補での受賞。物語は、岩手県に転勤した「わたし」が釣りを通じて、懇意にしていた同僚との交流を描く。彼は突然退職し、東日本大震災をきっかけに消息不明になるが、その父親から意外な人間性を知らされる。 選考委員の高樹のぶ子さんは「3・11を踏まえ、個人の内部と外部の崩壊を描き、大震災を小説にするにはこういう対応しかないのでは、と思わせる。自然描写も優れている」と震災小説としての価値を高く評価した。 佐藤さんは作家デビュー34年を経て、初候補で遅咲きの受賞を果たした。作品は生まれ変わりをモチーフとした恋愛長編小説。昭和から現代にかけて、数奇な運命に導かれた3人の男性と1人の女性の人生の交錯を描き出す。 選考委員の北方謙三さんは「デビュー時期は私とほとんど変わらないが、文章のみずみずしさを全く失っていない。的確で抑制が利いた文章の力は、候補作の中で抜きんでている」と語った。