【芥川賞・直木賞】受賞作家 (3/105)

芥川賞に選ばれた(右から)井戸川射子さん、佐藤厚志さん、直木賞の小川哲さん、千早茜さん=2023年1月19日、東京都内【時事通信社】 第168回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が19日、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞は井戸川射子さん(35)の「この世の喜びよ」と佐藤厚志さん(40)の「荒地の家族」が選ばれた。直木賞は小川哲さん(36)の「地図と拳(こぶし)」と千早茜さん(43)の「しろがねの葉」に決まった。 芥川賞の2人は共に初候補での受賞。「この世の喜びよ」は、ショッピングセンターの喪服売り場に勤める中年女性とフードコートに通う女子中学生との交流の物語。「荒地の家族」は、東日本大震災から10年以上を経た宮城県亘理町に暮らす植木職人の中年男性と、彼を取り巻く人間模様を描く。 選考委員の堀江敏幸さんは「共に目の前の生活を大事に描いている。佐藤さんは堅実な書き方で、井戸川さんは言葉一つ一つが粒立つ素晴らしい作品だった」と語った。 直木賞の小川さんは候補2度目での受賞。「地図と拳」は、満州(現中国東北部)の架空の都市を舞台に、日露戦争前夜から太平洋戦争終結後までの半世紀を描く。千早さんは3度目での受賞。「しろがねの葉」は、戦国末期の石見銀山が舞台の時代小説で、少女を主人公に銀を追う人間の生きざまを捉えた。 選考委員の宮部みゆきさんは、小川さんの作品を「小説の持つ全ての魅力が内包されていた」と評価し、千早さんの作品については「描写の一つ一つが考え抜かれ、空気感が表れていた」と強調した。 贈呈式は2月下旬に東京都内で行われ、正賞の時計と副賞100万円が贈られる。