【芥川賞・直木賞】受賞作家 (23/105)

笑顔で写真に納まる(右から)芥川賞に選ばれた「ニムロッド」の上田岳弘さんと「1R1分34秒」の町屋良平さん、直木賞に選ばれた「宝島」の真藤順丈さん=2019年1月16日、東京都千代田区【時事通信社】 第160回芥川・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が16日夕、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞に上田岳弘さん(39)の「ニムロッド」(群像12月号)と町屋良平さん(35)の「1R1分34秒」(新潮11月号)、直木賞には真藤順丈さん(41)の「宝島」(講談社)が選ばれた。 上田さんは候補3度目での受賞。IT企業を舞台に、ネット空間で仮想通貨の「採掘」を命じられた男性社員と、その恋人や小説家志望だった同僚との間に展開する内面の絡み合いを精緻な文体でつづった。選考委員の奥泉光さんは「人類的な世界観と日常的な出来事をつなげる手際の良さ」を高く評価した。 町屋さんは前回に続く候補2度目での受賞。アルバイトで食いつなぎながらプロの道を歩むボクサーの自意識をたどる。負けが込む焦燥感や肉体的苦痛の描写を織り交ぜ、変わり者のトレーナーとの出会いが生む主人公の心の変化を描写。奥泉さんは「この作家にならだまされてもいいと思えるほどの言葉の力」をたたえた。 初候補で受賞の真藤さんが7年かけて書き上げた「宝島」は第2次世界大戦後の沖縄が舞台。米軍の物資を略奪する伝説のヒーローの面影を追う少年少女3人の成長を描く。現実の事件も織り交ぜ、激動の沖縄史を壮大な叙事詩に仕立てた。 選考委員の林真理子さんは「平成最後の直木賞にふさわしい作品。東京生まれ東京育ちの作者が、返還までの沖縄の歴史を突き抜けた明るさでポップに描いた」と絶賛した。