宇宙の神秘 コズミックフォト (30/215)

探査機「あかつき」が赤外線カメラで撮影した金星上空の雲に現れた南北約1万キロに及ぶ弓形の模様〔JAXA提供〕【時事通信社】 宇宙航空研究開発機構(JAXA)と立教大などの研究グループは2017年1月17日、探査機「あかつき」が金星で撮影した南北1万キロに及ぶ弓形の模様について研究結果を発表した。地形の影響で発生した大気の乱れが上空に伝わり、巨大な模様を形成した可能性が高いという。論文は同日付の英科学誌ネイチャー・ジオサイエンス電子版に掲載された。 あかつきは2015年12月、金星の周回軌道投入に成功した直後、赤外線カメラなどで撮影。温度差を可視化できる赤外線画像には、金星を覆う硫酸の雲の頂部(高度約65キロ)に南北約1万キロに達する弓状の模様が現れていた。 金星には「スーパーローテーション」と呼ばれる秒速100メートルの東風が常に吹いているが、この模様は乱されることなく4日以上続いた。同様の現象はその後の観測でも数回確認された。 立教大の田口真教授らは、弓状の模様が出現した場所の直下に、いずれも標高5000メートルを超える高地があることに着目。地球でも山脈にぶつかった風が気圧変動を起こす場合があることから、金星で同様の変動が起きたと仮定してシミュレーションを行った。その結果、高度10キロ以下の低層大気で起きた気圧の変化が大気中を波のように伝わり、高度65キロで弓状の形に広がることが判明。この高度にある雲頂部の温度にも影響を与えていた。