【冬季五輪】「銀盤の記憶」女子フィギュアスケート (31/49)
2002年 ソルトレークシティー冬季五輪 サラ・ヒューズ 銀盤の女王の座はまれに見る大逆転で決まった。ヒューズの演技は、第4グループの2番目。米国予選3位で五輪初出場を果たした16歳は、クワンら上位3人を含めて、最後から5番目に登場した。 ショートプログラムで4位と出遅れ、ヒューズは「金と銀はもうないと思った。五輪に出場するだけでいいと思っていたから」と打ち明けた。だが、重圧から解き放たれたことで、思い切りのいいジャンプが面白いように決まった。 最初のジャンプは高さのあるダブルアクセル。そして、サルコウ―ループの3回転連続ジャンプを鮮やかに決める。その後も得意のジャンプをふんだんに取り入れたプログラムで観衆の心をつかんだ。「こんなにうまく滑れたことはなかった」という生涯最高の出来だったが、ロッカールームで待つ間は「メダルがもらえるかしら。色は何色でもいいから」。期待はその程度のものだった。 だが、コーエン、クワンがジャンプでミスを犯して、メダルを確保すると、最後のスルツカヤも、3回転フリップでバランスを崩す小さなミス。その結果は5人の審判がヒューズ、残る4人はスルツカヤを1位するという際どい採点となったが、わずかの差で地元米国の新星が制した。 「ずっと夢見てきたけど、まさかこんなことが起きるなんて…。でもスケートは好きだからもっとうまくなりたい」。16歳の女王は、頂点を極めた満足感より、さらに上を目指す思いにあふれていた。(写真はAFP時事)(2002年02月21日)