【冬季五輪】「銀盤の記憶」女子フィギュアスケート (19/49)
2010年 バンクーバー冬季五輪 金妍児 金妍児は出てきた得点に驚いた。そして、感極まった自分にも驚いた。「演技の後に泣いたことなんてなかったのに」と振り返って照れた。フリーで150点超え。男子並みの点数をたたき出した女王に、迫る者はいなかった。 圧巻だった。冒頭でルッツ―トーループの連続3回転を恐るべきスピードで踏み切って決めると、その後は崩れる気配さえ消えた。SPに強く、フリーは少しもろい。そんなイメージは過去のものになった。SPから通じて20個目の技、スピンを回りきると、初の五輪をきれいに滑り終えた。 今大会は高得点の傾向にある。とはいえ、ジャッジ評価点の合計は17.40点。9人のジャッジは誰も、どの演技要素にもマイナスの評価点をつけなかった。芸術性を示す演技構成点のうち3項目で9点台。一人だけ別世界にいた。 陽気で楽天的なオーサー・コーチは「完ぺきであることの証明だろう。これを破るのは至難の業だぞ」とまくし立てた。点数までは予想もしていなかったが、結末は信じていた。「プログラムをつくり始めた昨年5月には、今夜起きたことを思い描けていた」。得点を着実に稼げ、五輪で映えるものをつくり上げた自信があった。 しばらくは破られることがないであろう高得点。ミスなく手にした五輪の金メダル。「もう夢ではなくなったことが信じられない」と言った女王は、まずは3月の世界選手権で連覇を目指す。その先に、何を求めて滑るのか。(写真は時事通信社)(2010年02月25日)