高額療養、首相の判断後手=参院選へ懸念、与党突き上げ
政府が「高額療養費制度」の患者負担上限引き上げの見送りを決めたのは、与党内に夏の参院選への影響を懸念する声が強まったためだ。患者団体や野党はかねて凍結を訴えており、石破茂首相の判断が後手に回った印象は否めない。
「選挙で審判を仰ぐ議員はみんなピリピリしている」。自身も改選期を迎える自民党の参院幹部は7日、当初の引き上げ方針に対する反発が広がる現状を受け、記者団に危機感をあらわにした。
政府は昨年末、物価高や高齢化に伴う医療費増大を踏まえ、負担上限額を今年8月から3段階で上げる方針を決めた。これに対し、長期の治療を強いられるがん患者団体などが「命に関わる問題」として反対。それに押されるように立憲民主党や共産党も批判を展開した。
政府は先月14日、年4回以上の利用について上限額を据え置く方針に転換した。同28日には首相が国会答弁で、来年と再来年に予定する引き上げは再検討すると表明。しかし、全面凍結を求める声はやまず、3度目の軌道修正へ追い込まれていった。
政府関係者によると、首相は7日朝に加藤勝信財務相、福岡資麿厚生労働相と首相官邸内で協議し、上限引き上げ見送りの方向を確認。同日夜に患者団体代表と面会した。その後、記者団に今秋までの新方針決定を表明し、「極めて厳しい決断だと理解してほしい」と語った。
背景にあるのは、夏に迫る東京都議選と参院選だ。首相は7日の参院予算委員会で「選挙目当てで決めることではない」と語ったが、既に派閥裏金事件でダメージを受けた自民の焦りは強い。
公明党も不満を募らせており、斉藤鉄夫代表は5日に首相と官邸で面会した際、「選挙を前に現場では説明が難しくなっている」と伝えた。首相は、早期に決断を下さなければ、少数与党で不安定な政権基盤がさらに揺らぎかねないと恐れたもようだ。
2025年度予算案が修正の上、衆院を通過したばかりのタイミングとなったことで、国会審議の混乱は避けられない。与党幹部への根回しもほとんどなかった。自民の森山裕幹事長と小野寺五典政調会長は7日、官房副長官2人と財務、厚労両省幹部を党本部に呼び、今後の対応を協議した。
立民の野田佳彦代表は千葉県松戸市で記者団に「もっと早く決断していれば、こういうことにならなかった。一手遅かった」と批判。国民民主党の榛葉賀津也幹事長は記者会見で「プロセスとして(政権側の)ガバナンスはどうなっているのか」と疑問視した。
[時事通信社]
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