「次世代育成、われわれの責任」 高校生平和大使、今年で23年―被爆2世平野さん
国内外で被爆の実相と核兵器の廃絶を訴える「高校生平和大使」の活動が今年で23年目を迎えた。これまでに270人を超える全国の高校生がジュネーブの国連欧州本部など世界各国で広島、長崎の体験を伝えてきた。若者に平和への思いを受け継いでほしいと設立時から支え続けているのが派遣委員会責任者の平野伸人さん(73)だ。被爆者の高齢化が進む中、「次世代の平和運動の担い手を育てるのがわれわれの世代の責務だ」と力強く語る。
被爆2世の平野さんが原爆を意識したのは高校生の時。近所に住む幼なじみの同級生が白血病で突然死した。誰もが原爆の影響を疑った。この経験が、平野さんの平和運動の原点となった。東京の大学を卒業後、会社員を経て長崎で教員となった平野さんは、被爆2世としての活動を開始。平和運動のけん引役となっていった。
高校生平和大使の取り組みが始まったのは1998年。インド、パキスタンの核実験がきっかけだった。当時「ながさき平和大集会」の事務局長を務めていた平野さんは、「国連に若者を送ろう」と提案した。「平和運動に参加する若者が少ないという危機感があった。若い人を育てなければならないと考えた」と振り返る。
当初は仲間内からも懐疑的な意見があり、被爆者からも「若い人に何ができるのか」と否定的な声を掛けられた。しかし、「そんなことを言ったら何事も始まらない」と反対を振り切った。同年、初代平和大使の2人がニューヨークの国連本部を訪れ、英語で核兵器廃絶を訴えた。
高校生平和大使の活動は、2018年と19年にノーベル平和賞候補に推薦されるなど世界的に評価されるようになった。「粘り強さが成功につながった」と平野さんは自信を見せる。
課題も抱えている。「平和大使の期間だけは務めるが、終わったらどこにいるのか分からない子も当然いる」と活動の難しさを語る。「運動をやっていてよかった」と感じるのは毎年8月9日、長崎市に集まる20~30人のOB、OGと会食する時。「23年間、日曜日をすべて使って育て続けてきた。子どもたちの将来が非常に頼もしい」と次世代を担う若者に期待を寄せている。(2020/08/09-06:43)
Nagasaki Peace Activist Working to Nurture Next Generation
Nobuto Hirano, a peace activist born to a hibakusha family in Nagasaki, is determined to nurture young people so that they will take over the work to pass on memories of the tragedy and hopes for peace.
"It is our generation's responsibility to nurture people who will lead peace activities in the next generation," Hirano, 73, said, noting that hibakusha atomic bomb survivors are aging.
Hirano has been supporting the "high school peace ambassador" movement since it began 23 years ago.
The movement has sent over 270 Japanese high school students to visit the U.N. office in Geneva and other places across the world to convey the voices of hibakusha and call for the abolition of nuclear weapons.
Nagasaki was devastated by a U.S. atomic bomb Aug. 9, 1945, three days after the atomic bombing of the western city of Hiroshima, in the closing days of World War II.
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