2019.10.07 スポーツ

【男子テニス】ノバク・ジョコビッチ (18/243)

全仏オープンの男子シングルスで5年ぶり2度目の優勝を遂げ、トロフィーにキスをするノバク・ジョコビッチ=2021年6月13日、パリ【EPA時事】 ジョコビッチは最後にボレーを決め、5年ぶりに「赤土の王者」の称号を奪還した。2セットを落とす大ピンチからの驚異的な追い上げ。百戦錬磨の世界1位らしい勝ちっぷりで、四大大会初優勝を狙った22歳チチパスの大きな壁になった。 第2セットが終わるとトイレ休憩を取り、心を落ち着かせた。この短時間で、何かが切り替わった。第3セット以降は精度を上げたサーブを軸に速攻を増やし、相手のリズムを崩した。チチパスは「別の選手になったようだった」と脱帽した。 準決勝では全仏で史上最多13度の優勝を誇るナダルを破り、2日後の決勝で大逆転勝ち。「これ以上の幸せはない。この48時間は、競技人生の中でトップ3に入る達成感だ」と自賛した。 フェデラーとナダルが持つ四大大会男子最多の20勝まで、あと1勝。全仏優勝は2度目となり、ライバル2人が成し遂げていない四大大会全てを複数回制する「生涯グランドスラム・ダブル」を達成した。 7月開幕の東京五輪出場は明言していないが、五輪を含めた完全制覇の「ゴールデンスラム」はジョコビッチの目標の一つ。「全てのことは可能」と自信ありげに言い切った。 チチパスは表彰式で心境を問われても、打ちひしがれた様子でしばらく言葉が出なかった。四大大会で初めて臨んだ決勝で、世界1位をあと一歩のところまで追い詰めながら大逆転負け。「スタートは完璧だったのに。本当になぜだか分からない」。途中からプレーの精度を上げたジョコビッチに押し返され、第3セット以降は一度も相手のサービスゲームを破れなかった。 次世代を引っ張る立場として期待される22歳。ジョコビッチから「君は何度も四大大会で優勝できるだろう」と励まされると、自らを納得させるようにうなずいたチチパス。「僕が優勝カップを手にする日が来ないという理由が見つからない」。つらい敗戦の中で、希望の光も見えた。