【冬季五輪】「銀盤の記憶」男子フィギュアスケート (12/30)
2010年 バンクーバー冬季五輪 銅メダルを獲得した高橋大輔【時事通信社】 男子が4回転を跳ぶリスクはミスしたときに失う得点だけではない。転べば体力を奪われる。気持ちの面でも演技が崩れる。絶対に跳ぶと決めていた高橋は「失敗したときのリカバリーも練習してきた」と言った。そんな小さな積み重ねが銅メダルに手をかけられた一つの要因でもある。 嫌な転び方だった。軸が大きく傾いた着氷でブレード(刃)が横滑りし、衝撃をさほど和らげられないまま尻を強打した。しかし、そこから持ち直し、演技後半に入れて1.1倍のボーナス加点を狙ったトリプルアクセル(3回転半)も決めた。最後のスピンは甘く、ふらついたが、そこまでもたせた。 4回転を避けたら、どれほど演技がまとまるのか。しかし、高橋にそういう発想はなかった。「アスリートとして理想を求めてやってきた。この場で挑戦できたことが今後への経験になる」。難しいことをやって勝つのがスポーツの本来の姿。かつては2度入れていたぐらいだから、自分は退化しているとさえ思う。1度入れるのは当然。そう思って挑んだ。 4回転トーループは転倒した上に回転不足を取られ、見栄え評価でも減点されて1点しか残らなかった。それでもSP3位の貯金を保てたのは他選手の伸び悩みにも救われたから。だからこそ「成功させてメダルを取りたかった」と思う。 SPで0.6点差にひしめいた3人のうち大技に挑んだ高橋とプルシェンコが、挑まなかったライサチェクにかわされた。結果を受け止めながらも高橋は「これが最後じゃない」と言った。攻めて、メダルの色は銅になった。でも、挑み続ければいつか報われると信じている。(2010年02月18日)