2021.11.02 スポーツ

【冬季五輪】「銀盤の記憶」男子フィギュアスケート (3/30)

2022年 北京冬季五輪 銀メダルを獲得した鍵山優真【時事通信社】 演技直後の鍵山は両腕を氷に付け、荒い呼吸を整える。出し切った。「五輪という舞台で一つも悔いは残したくない。思い切り滑れてよかった」。全力を尽くした先に銀メダルが待っていた。 五輪に2度出場した父の正和コーチもジャンプが巧みだった。柔らかな着氷に父の姿が重なるという声は多い。冒頭の4回転サルコーは衝撃が吸収されたような着氷。出来栄え点(GOE)は、ジャッジ9人のうち5人が5点満点を付けた。 SP2位でメダルを射程に入れて迎えたフリー。「この演技で全てが決まる」と考えると緊張に襲われたが、逃げなかった。2本目のジャンプで成功率が高くない4回転ループに迷わず挑戦。大きく着氷が乱れたものの、攻めの演技を貫けた。 「4年前は、ここに立てるなんて思ってもいなかった」。高校3年で五輪の表彰台に立ったサラブレッドは、順調に歩を進めてきたわけではない。小学生時代は「今のような向上心もなかった」。中学1年で長野県から横浜市に転居すると身近なライバルに刺激をもらい、徐々に力を伸ばした。同い年の親友で、2019年ジュニア・グランプリ・ファイナル覇者の佐藤駿とは練習で4回転ジャンプを見せ合い、試合以外でも切磋琢磨(せっさたくま)してきた。 もともとは控えめなタイプで、昨季世界選手権代表が決まった際の会見で「すごく怖い」と発言した。羽生に「自分の気持ちにうそはつかないで」と活を入れられ、目が覚めた。その舞台で2位。今季は結果を気にして崩れかけたことがあったが、父に「立場や成績は関係ない。練習してきたことを頑張るだけ」と言われ、初心に戻れた。 「もっと成長できる。まだまだやれるぞ」。初の五輪で銀をつかんでも、口を突くのはさらに上を目指す言葉ばかり。その姿に、きらきらした若さがあふれ出ていた。(2022年02月10日)

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