2024.03.11 13:32Nation

船上の語り部「大切な人は誰」 家族への感謝、乗客に訴え―失った両親、もう謝れない・宮城松島

 「あなたにとって一番大切な人は誰ですか」。日本三景の一つ宮城県の「松島」を巡る遊覧船で、こう乗客らに問い掛ける東日本大震災の語り部がいる。丸文松島汽船(同県)で船上ガイドを務める横山純子さん(65)。津波で両親を亡くした経験から「生きることや家族に感謝して、後悔しないように1日を過ごしてほしい」と訴える。
 13年前のあの日、東松島市の自宅は津波で流され、同居していた両親が行方不明に。横山さんはがれきなどが散乱する街で、遺体安置所を回るなど2人を捜し続けた。震災から約4カ月後に両親の遺体は見つかったが、震災当日の朝の出来事が今も心に残る。
 前の晩に夜更かしした結果、朝寝坊した。早朝、慌てて身支度する様子を見た両親に注意され、「うるさい」と言い返して家を出た。それが2人との最後の会話になった。「もう謝ることもできない。『ありがとう』もちゃんと言ってなかった」と涙を浮かべる。
 捜索中は声が出なくなりガイドとして勤務できなかった。震災発生から半年ほどたっても、同情されるのが嫌で被災経験を周りに話せずにいた。乗客から「大丈夫でしたか」と聞かれても「何ともなかったですよ」と答えた。ただ、胸の内にはもやもやした思いが残った。「真摯(しんし)に語ろう」と決意し、船上の語り部になった。
 語り始めた当初と現在では「話す内容は変わってきた」。津波で島の形が変わったことを中心に、震災時の状況を淡々と説明していたが、今では自分の体験談や心境を重点的に伝えている。自分のこととして感じてもらうため、乗客に目をつぶって「一番大事な人」を思い浮かべてもらい、「その人が一瞬でこの世からいなくなったらどう思うか」と問い掛ける。
 子どもたちから「そんな話は聞きたくなかった」という声があるのも事実だ。ただ「津波がなければ両親のありがたみを感じないまま、だらだら過ごしていたと思う」と横山さん。「大災害に遭わなくても、家族や日常へ感謝することを頭の片隅にでも思ってくれればありがたい」と語った。(2024/03/11-13:32)

2024.03.11 13:32Nation

13 Years On: Storyteller Asks, "Who's the Most Important Person for You?"


A "kataribe" storyteller of the massive earthquake and tsunami that struck coastal areas across northeastern Japan 13 years ago always asks listeners who the most important person is for them.
   Junko Yokoyama, 65, works as a guide at Marubun Matsushima Kisen Co., which provides tour boat programs in Miyagi Prefecture's Matsushima Bay, known as one of Japan's three most scenic spots.
   Yokoyama, who lost her parents in the tsunami, said, "I want people to be grateful for their families and being alive, and live each day so they won't regret."
   On March 11, 2011, Yokoyama's house in the Miyagi city of Higashimatsushima was washed away by the tsunami, and her parents went missing. Some four months after the disaster, their bodies were found.
   Yokoyama overslept on the March 11 morning before the disaster, after staying up late the night before.

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