国連・中満次長「核不使用死守を」　ウクライナ侵攻、脅威が「現実」―時事トップセミナーで講演

　【ニューヨーク時事】国連の中満泉軍縮担当上級代表（事務次長）は７日、ニューヨークで開かれた時事トップセミナーで講演した。ロシアのウクライナ侵攻で「（世界は）核兵器の脅威が現実的なものだと突き付けられた」と指摘。不測の事態発生のリスクが「冷戦のピーク時以来、最高になっている」として「核不使用の規範を死守しなければならない」と訴えた。
　中満氏は、ロシアによる侵攻を「核戦力を背景に各国の紛争介入を抑止しつつ、隣国を侵略するという核抑止力の最もあってはならない姿」だと強調。侵攻をきっかけに軍事費増強にかじを切る国が増えているとし「核廃絶に向けた歩みの後退は否定できない」との認識を示しながらも、「『核兵器は人類を破滅させかねない』との共通認識を取り戻さなければならない」と力を込めた。
　今月２１日から核兵器禁止条約の第１回締約国会議がオーストリアの首都ウィーンで、８月には核拡散防止条約（ＮＰＴ）再検討会議がニューヨークの国連本部で開催される。中満氏は、いずれの会議でも「核兵器の使用は許されない」とのメッセージを発することが重要だと語った。
　その上で締約国会議では、核兵器禁止条約が核保有国の重視するＮＰＴと「補完的関係」にあることをしっかりと示す必要があるとした。
　一方、前回２０１５年に最終文書を採択できなかったＮＰＴ再検討会議に関しては、ウクライナや北朝鮮、イランの状況に加え、中国が反発している米英豪３カ国の安保枠組み「ＡＵＫＵＳ（オーカス）」などをめぐって今回も難しい議論になるとの見通しを示し、「８月は勝負の月になる」と話した。（2022/06/08-13:32）

Izumi Nakamitsu, U.N. undersecretary-general and high representative for disarmament affairs, on Tuesday urged the world not to use nuclear weapons at all cost.
   Delivering a speech at a seminar hosted by Jiji Press in New York, Nakamitsu noted that the world was struck with the realization that the threat of nuclear weapons is real through Russia's invasion of Ukraine.
   The possibility of an unforeseen event to occur is now at the highest level only previously seen at the height of the Cold War, she added.
   Nakamitsu stressed that the invasion was the most unacceptable form of nuclear deterrence, in that Russia invaded the neighbor while using its nuclear capabilities to thwart any interference by other countries.
   Noting that more and more countries are deciding to boost military spending following Russia's military aggression, Nakamitsu said that she cannot deny that such moves will hinder progress made by the world toward nuclear abolition.