2021.07.29 14:02World eye
宇宙観光の活発化、環境負荷への懸念増大
【ワシントンAFP=時事】英富豪リチャード・ブランソン氏の創業した宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティックが今月行ったテスト飛行は、万々歳で終わるはずだった。(写真は米ニューメキシコ州にある商業宇宙船発着基地スぺースポート・アメリカで、母船から切り離された宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティックの宇宙船「スペースシップツー」の2号機「ユニティ」)
ところが、同社は宇宙船「スペースシップツー」の2号機「ユニティ」の炭素排出量に対し、かなりの非難を浴びることとなった。
米富豪ジェフ・ベゾス氏の宇宙開発企業ブルー・オリジンが20日に行った同社初の有人宇宙飛行、さらにイーロン・マスク氏率いる宇宙開発企業スペースXが9月に計画している民間人のみの宇宙飛行など、まだ生まれて間もない宇宙観光産業は話題が続く。
一方で宇宙観光産業は、環境に与える負荷をめぐる難問に直面もしている。
今はまだロケットは、著しい汚染が起きるほど頻繁には打ち上げられていない。「商用航空を含めた人間の他の活動と比較しても、二酸化炭素(CO2)排出量は全く微々たるものです」と、米航空宇宙局(NASA)のギャビン・シュミット上級気候顧問は語る。
それでも宇宙観光産業が大きく成長しようとする中、科学者の間では長期にわたる悪影響の可能性を心配する声がある。特に懸念されているのが、未知の部分が多い、成層圏にあるオゾン層に与える影響だ。
ヴァージン・ギャラクティックは、創業者のブランソン氏が数分間飛行するために化石燃料を大量消費する宇宙船を飛ばしたことで、米CNNや経済誌フォーブスの論評、さらにソーシャルメディアのユーザーらからたたかれている。
一方、ヴァージン側は今回の炭素排出量について、ロンドン-ニューヨークのビジネスクラス便とほぼ同じ量だと主張している。
同社は「すでにテスト飛行での炭素排出量を相殺する措置を取った。さらに将来、顧客を乗せて飛行する際の排出量を相殺し、わが社のサプライチェーンのカーボンフットプリント(温室効果ガス排出量をCO2に換算した数値)を減らす方法を検討している」と、AFPに文書でコメントしている。
とはいえ、仏宇宙物理学者ロラン・ルゥク氏らが学術・研究ニュースサイト「カンバセーション」に発表した分析によると、大西洋横断飛行が数百人を運ぶのに対し、ヴァージンの宇宙船は6人で乗客1人当たりの排出量は4.5トンに上るという。これは平均的な乗用車が地球を1周する量に相当する。また、パリ協定の目標を達するために推奨される1人当たりの年間排出量の倍以上だ。
「均衡を大きく欠く問題です」とコロラド大学ボルダー校の大気科学者ダリン・トゥーイー氏はAFPに語った。
子どもの頃から「宇宙計画とともに育ち、それが科学の世界に入るきっかけ」だったと話すトゥーイー氏だが、宇宙飛行にたとえただで誘われても乗り気になれないという。「そうすると自分自身のフットプリントがとてつもなく大きくなると分かっているからです」
■よりクリーンな燃料を求めて
ヴァージン・ギャラクティックの宇宙船「スペースシップツー」は、合成ゴムの一種を燃料として使用し、強力な温室効果ガスである亜酸化窒素の中で燃やす。この燃料は、30~50キロ上空の上部成層圏にブラックカーボン(黒色炭素)を送り込む。
ブラックカーボンの粒子はさまざまな悪影響を及ぼす。例えば、太陽光をはね返してしまうために「核の冬」のような地球冷却が起きる。あるいは化学反応が加速され、有害な放射線から人間を守っているオゾン層が破壊される。
「危険な段階にいるのかもしれません」と指摘するトゥーイー氏は、宇宙船が頻繁に打ち上げられるようになる前にこうした影響に関するさらなる科学的調査を求めている。
ヴァージンは年間400回の宇宙船飛行を目指しているとされる。
一方、ベゾス氏のブルー・オリジンは、ヴァージンのスペースシップツーと比べてはるかにクリーンだと主張している。ブルー・オリジンでは液化水素と液化酸素を燃料とし、生成された水は燃焼を経て水蒸気となる。
同社はツイッターで、米航空宇宙研究開発コンサルティング企業エアロスペースの科学者マーチン・ロス氏の最近の論文を引用している。
ロス氏の論文によると、ブルー・オリジンの再使用可能な垂直離着陸ロケットは概算で、ヴァージンの宇宙船と比べてオゾンの消失は100分の1、気候強制力は750分の1程度だという。
だからといって、ブルー・オリジンの宇宙船も完全にクリーンではない。「液化酸素や液化水素を作るには電気が必要です」とロス氏はAFPに指摘した。ロケット推進剤をつくるために必要な電気量は、サプライチェーンをさかのぼって計算できると言う。「それをどれだけさかのぼるかによります」【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕(2021/07/29-14:02)
ところが、同社は宇宙船「スペースシップツー」の2号機「ユニティ」の炭素排出量に対し、かなりの非難を浴びることとなった。
米富豪ジェフ・ベゾス氏の宇宙開発企業ブルー・オリジンが20日に行った同社初の有人宇宙飛行、さらにイーロン・マスク氏率いる宇宙開発企業スペースXが9月に計画している民間人のみの宇宙飛行など、まだ生まれて間もない宇宙観光産業は話題が続く。
一方で宇宙観光産業は、環境に与える負荷をめぐる難問に直面もしている。
今はまだロケットは、著しい汚染が起きるほど頻繁には打ち上げられていない。「商用航空を含めた人間の他の活動と比較しても、二酸化炭素(CO2)排出量は全く微々たるものです」と、米航空宇宙局(NASA)のギャビン・シュミット上級気候顧問は語る。
それでも宇宙観光産業が大きく成長しようとする中、科学者の間では長期にわたる悪影響の可能性を心配する声がある。特に懸念されているのが、未知の部分が多い、成層圏にあるオゾン層に与える影響だ。
ヴァージン・ギャラクティックは、創業者のブランソン氏が数分間飛行するために化石燃料を大量消費する宇宙船を飛ばしたことで、米CNNや経済誌フォーブスの論評、さらにソーシャルメディアのユーザーらからたたかれている。
一方、ヴァージン側は今回の炭素排出量について、ロンドン-ニューヨークのビジネスクラス便とほぼ同じ量だと主張している。
同社は「すでにテスト飛行での炭素排出量を相殺する措置を取った。さらに将来、顧客を乗せて飛行する際の排出量を相殺し、わが社のサプライチェーンのカーボンフットプリント(温室効果ガス排出量をCO2に換算した数値)を減らす方法を検討している」と、AFPに文書でコメントしている。
とはいえ、仏宇宙物理学者ロラン・ルゥク氏らが学術・研究ニュースサイト「カンバセーション」に発表した分析によると、大西洋横断飛行が数百人を運ぶのに対し、ヴァージンの宇宙船は6人で乗客1人当たりの排出量は4.5トンに上るという。これは平均的な乗用車が地球を1周する量に相当する。また、パリ協定の目標を達するために推奨される1人当たりの年間排出量の倍以上だ。
「均衡を大きく欠く問題です」とコロラド大学ボルダー校の大気科学者ダリン・トゥーイー氏はAFPに語った。
子どもの頃から「宇宙計画とともに育ち、それが科学の世界に入るきっかけ」だったと話すトゥーイー氏だが、宇宙飛行にたとえただで誘われても乗り気になれないという。「そうすると自分自身のフットプリントがとてつもなく大きくなると分かっているからです」
■よりクリーンな燃料を求めて
ヴァージン・ギャラクティックの宇宙船「スペースシップツー」は、合成ゴムの一種を燃料として使用し、強力な温室効果ガスである亜酸化窒素の中で燃やす。この燃料は、30~50キロ上空の上部成層圏にブラックカーボン(黒色炭素)を送り込む。
ブラックカーボンの粒子はさまざまな悪影響を及ぼす。例えば、太陽光をはね返してしまうために「核の冬」のような地球冷却が起きる。あるいは化学反応が加速され、有害な放射線から人間を守っているオゾン層が破壊される。
「危険な段階にいるのかもしれません」と指摘するトゥーイー氏は、宇宙船が頻繁に打ち上げられるようになる前にこうした影響に関するさらなる科学的調査を求めている。
ヴァージンは年間400回の宇宙船飛行を目指しているとされる。
一方、ベゾス氏のブルー・オリジンは、ヴァージンのスペースシップツーと比べてはるかにクリーンだと主張している。ブルー・オリジンでは液化水素と液化酸素を燃料とし、生成された水は燃焼を経て水蒸気となる。
同社はツイッターで、米航空宇宙研究開発コンサルティング企業エアロスペースの科学者マーチン・ロス氏の最近の論文を引用している。
ロス氏の論文によると、ブルー・オリジンの再使用可能な垂直離着陸ロケットは概算で、ヴァージンの宇宙船と比べてオゾンの消失は100分の1、気候強制力は750分の1程度だという。
だからといって、ブルー・オリジンの宇宙船も完全にクリーンではない。「液化酸素や液化水素を作るには電気が必要です」とロス氏はAFPに指摘した。ロケット推進剤をつくるために必要な電気量は、サプライチェーンをさかのぼって計算できると言う。「それをどれだけさかのぼるかによります」【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕(2021/07/29-14:02)
2021.07.29 14:02World eye
Environmental concerns grow as space tourism lifts off
After years of waiting, Richard Branson's journey to space this month on a Virgin Galactic vessel was supposed to be a triumphant homecoming. Instead, the jaunt attracted significant criticism -- about its carbon footprint.
With Jeff Bezos set to launch on a Blue Origin rocket on July 20, and Elon Musk's SpaceX planning an all-civilian orbital mission in September, the nascent space tourism industry finds itself facing tough questions about its environmental impact.
Right now, rocket launches as a whole don't happen often enough to pollute significantly.
The carbon dioxide emissions are totally negligible compared to other human activities or even commercial aviation, NASA's chief climate advisor Gavin Schmidt told AFP.
But some scientists are worried about the potential for longer term harm as the industry is poised for major growth, particularly impacts to the ozone layer in the still poorly understood upper atmosphere.
Virgin Galactic, which came under fire in op-eds on CNN and Forbes, as well as on social media, for sending its billionaire founder to space for a few minutes in a fossil fuel-guzzling spaceship, says its carbon emissions are about equivalent to a business-class ticket from London to New York.
The company has already taken steps to offset the carbon emissions from its test flights and is examining opportunities to offset the carbon emissions for future customer flights, and reduce our supply chain's carbon footprint, it said in a statement to AFP.
But while transatlantic flights carry hundreds of people, Virgin's emissions work out to around 4.5 tonnes per passenger in a six passenger flight, according to an analysis published by French astrophysicist Roland Lehoucq and colleagues in The Conversation.
That's roughly equivalent to driving a typical car around the Earth, and more than twice the individual annual carbon budget recommended to meet the objectives of the Paris climate accord.
The issue here is really one of disproportionate impacts, Darin Toohey, an atmospheric scientist at the University of Colorado, Boulder told AFP.
I actually grew up on the space program and that got me into science.... but if someone offered me a free ride, I would be very nervous taking it because I would know that my own footprint is way larger than it should be, he said.
- Cleaner fuels possible -
Virgin Galactic's SpaceShipTwo uses a type of synthetic rubber as fuel and burns it in nitrous oxide, a powerful greenhouse gas.
The fuel pumps black carbon into upper stratosphere, 30-50 kilometers (18 to 30 miles) high.
Once there, these particles can have multiple impacts, from reflecting sunlight and causing a nuclear winter effect, to accelerating chemical reactions that deplete the ozone layer, which is vital to protecting people from harmful radiation.
We could be at a dangerous point, said Toohey, who wants more scientific investigations into these effects before the launches become more frequent.
Virgin has said it wants to conduct 400 flights a year.
Compared to Virgin Galactic's SpaceShipTwo spaceplanes, Blue Origin's are much cleaner, according to a recent paper by scientist Martin Ross of Aerospace, which Bezos' company plugged on Twitter.
That's because it burns liquid hydrogen and liquid oxygen, which combusts as water vapor.
Ross' paper found Blue Origin's vertical launch reusable rocket causes a hundred times less ozone loss and 750 times less climate forcing magnitude than Virgin's, according to ballpark calculations.
But that doesn't mean it's totally clean.
It takes electricity to make liquid oxygen and liquid hydrogen, Ross told AFP.
You could go back and calculate how much electricity was used to make the propellant, he said. It depends how far back in the supply chain you look.
- Space shaming? -
The impact of suborbital launches such as those by Virgin and Blue Origin pale in comparison to the impact of rockets that achieve orbit.
When SpaceX puts four private citizens into space in September, it will use its Falcon 9 rocket, which calculations show puts out the equivalent of 395 transatlantic flights-worth of carbon emissions.
We are living in the era of climate change and starting an activity that increases emissions as part of a tourism activity is not good timing, Annette Toivonen, author of the book Sustainable Space Tourism, told AFP.
The world is far more aware of the climate crisis now than when these companies were founded in the early 2000s and that could encourage businesses to look at ways to minimize pollution through cleaner technologies to get ahead of the problem.
Who would want to be a space tourist if you can't tell people you were a space tourist? argued Toivonen, who lectures at Finland's Haaga-Helia University of Applied Sciences.
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