「原爆憎む思い」受け継ぐ=広島の被爆2世、健康不安抱え―日本被団協ノーベル賞決定
被爆者の母は就職や結婚で差別された―。自らも健康への不安を抱えつつ、被爆2世運動に携わる角田拓さん(61)=広島市=は日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞決定に「被爆は過去の話ではない。戦争や原爆を憎む被爆者の気持ちを、2世として受け継いでいく」と訴えている。
角田さんの母(89)は10歳の時、爆心地から約2.5キロの小学校校庭で被爆し、顔や腕、肩に重いやけどを負った。ケロイドが残る母からは、親族が亡くなった状況だけでなく、就職や結婚で差別を受けたことも聞いて育った。
角田さんは高校在学中、原爆の影響を調べる放射線影響研究所の要請で健康調査を受けた。研究所まで出向くよう求められ、「被爆2世なんだと突き付けられた」という。以来、病気への不安が拭えなくなった。
2018年、姉ががんの告知を受けた。親の被爆とがんの関係は明らかになっていないものの、「母が自分を責めるのではないかと考え、黙っていた。苦しかった」と吐露する。姉は翌年、58歳で亡くなり、そこで初めて母に病名を告げた。母は姉の遺体のそばに寄り添い、名前を呼びながらずっと顔をなでていた。
親しい2世の友人が結婚差別に遭い、涙する姿も見てきた角田さん。ほぼ寝たきりになった母ら被爆者が高齢化する中、「原爆は過去の話ではない。今も苦しんでいる人がいると訴えることで、核廃絶が進むと信じている」と語り、広島県被爆二世団体連絡協議会の事務局長として運動に注力する。
日本被団協の受賞決定を「活動を支えたのは名も無き被爆者たち。自分の身をさらして原爆の恐ろしさを語ってきた被爆者に光が当たった」と受け止めた。母の苦労を傍らで感じてきた者として、「戦争や原爆を憎む気持ちを忘れてはならない」と心に決めている。
[時事通信社]
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