岡口判事に「罷免」判決=表現行為で初、戦後8人目―SNS不適切投稿・弾劾裁判
SNSの不適切な投稿で殺人事件の遺族を傷つけたなどとして訴追された仙台高裁の岡口基一判事(58)=職務停止中=の判決が3日、国会の裁判官弾劾裁判所(裁判長・船田元衆院議員)であり、船田裁判長は「遺族の尊厳を侵害し、表現の自由として裁判官に許容される限度を逸脱した」と述べ、「罷免」を言い渡した。罷免とされたのは戦後8人目で、表現行為を巡っては初めて。
判決は即日確定し、岡口判事は裁判官の地位を喪失。判事は再任を希望せず任期満了の今月12日に退官する意向だったが、判決により退職金は支払われない見込みで、弁護士や検察官になる法曹資格も失った。
判決によると、岡口判事は2017年、東京都江戸川区の女子高校生殺人事件に関し、ツイッター(現X)に「首を絞められ苦しむ姿に性的興奮を覚える男」「無残にも殺されてしまった女性」と投稿。19年には「遺族は東京高裁に洗脳されている」と書き込むなどした。
船田裁判長は、投稿は岡口判事が量刑に問題があると考える判例を紹介する目的だったと指摘。一方で、遺族が抗議した後も投稿が繰り返されたことを挙げ、「何度も執拗(しつよう)に遺族を傷つけた」と非難した。
裁判官の表現行為については、憲法が保障しているとした上で、SNSには他人を傷つける投稿が拡散する危険性があるのに配慮を怠ったと判断。「表現の自由を行使する手段として甚だ問題だ」として、裁判官としての威信を著しく失う非行に当たると認定した。
罷免には疑問が残るなどとする少数意見があったとし、「裁判員の3分の2以上の多数意見で罷免とした」と述べた。
岡口判事は公判で、投稿の理由を「死刑相当と思ったが無期懲役で、量刑的におかしいと思い紹介した」と説明。「不快な思いをさせ、謝罪申し上げたい」などと話していた。
◇過去の弾劾裁判
判決年 肩書(当時) 主な訴追事実 判決
1948年 静岡地裁支部判事 無断欠勤 不罷免
50年 大月簡裁判事 家宅捜索の情報漏えい 不罷免
56年 帯広簡裁判事 事件処理の怠慢 罷免
57年 厚木簡裁判事 事件関係者から接待 罷免
(50年の大月簡裁判事と同人物)
77年 京都地裁判事補 首相への偽電話録音を記者に聞かせる 罷免
81年 東京地裁判事補 事件関係者から物品受領 罷免
2001年 東京高裁判事 少女3人を買春 罷免
08年 宇都宮地裁判事 女性職員にストーカー 罷免
13年 大阪地裁判事補 電車内で盗撮 罷免
[時事通信社]
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