買収先と相次ぎトラブル=ルシアン社、仲介業者に課題も
ルシアンホールディングスは2021年に設立された。「異業種一体型企業」を名乗り、不動産や物流、エネルギーなどの幅広い分野で事業を展開していると触れ込んでいた。これまでに中小企業30社以上を買収したが、トラブルも相次いでいる。
洋菓子店などを展開するテリオ(東京)は2023年3月、コロナ禍で経営難となった。M&A(合併・買収)仲介業者から「買収に関心を示している」としてルシアン社を紹介された。
テリオ社元社長によると、ルシアン社の担当者は、倒産時に経営者が債務返済義務を負う「経営者保証」について、買収後、同社に移すと約束した。雇用も維持されると感じ、「従業員を守れるなら」と約100万円で会社の売却を決めた。
しかし、ルシアン社は買収後、テリオ社の資産約800万円を別の口座に移して、音信不通になった。経営者保証も解除されず、元社長は引き続き、債務への対応に追われた。
元社長はルシアン社について、「だまされたようなものだ」と悔しさをにじませる一方、しっかりとした審査もしないまま、企業を紹介するM&A仲介業者の姿勢にも問題があると指摘する。
中小企業庁は8月末、M&Aに関する指針を改訂し、仲介業者に対し、契約後に当事者間でのトラブルが起きないよう考慮することを求めた。
M&A仲介協会の荒井邦彦代表理事は「仲介業者の役割は契約締結までだったが、今後は契約が正しく履行されるまで見届けるようにしなければならない」と話している。
[時事通信社]
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