アベノミクス、崩壊寸前 「戦後最長景気」幻に―早期回復見通せず
第2次安倍政権が2012年12月の発足とともに打ち出した経済政策「アベノミクス」が崩壊寸前だ。内閣府は景気拡大局面が18年10月に終わり、後退に転じたと正式に認定。拡大期間は「いざなみ景気」に届かず、戦後最長の記録更新は幻となった。政府は21年度のプラス成長を見込むが、新型コロナウイルス感染拡大は収束の兆しがなく、早期の回復は見通せない。
◇実感乏しく
政権発足時、安倍晋三首相は「大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の『三本の矢』で経済政策を力強く進める」と表明、経済最優先の姿勢を示した。
「第1の矢」として放たれたのが日銀の「異次元の金融緩和」だ。巨額のマネーを供給し、政権発足時に1万円前後だった日経平均株価は18年10月に2万4270円の高値を付けた。円安を追い風に、製造業を中心に最高益を記録する企業が相次ぎ、企業の内部留保(金融業、保険業除く)は12年度の304兆円から18年度には463兆円まで積み上がった。
しかし、好調な企業収益が賃上げに回って個人消費が活性化する「経済の好循環」の勢いは弱いままに終わった。三菱UFJリサーチ&コンサルティングによると、物価上昇の影響を加味した実質賃金は、「いざなぎ景気」で年平均8.2%、「バブル景気」では1.5%とそれぞれ増えたのに対し、今回の景気拡大局面では0.5%減少。小林真一郎主席研究員は「多くの国民にとって実感の乏しい景気回復となった」と指摘する。
◇財政再建は後回し
税収が増える景気拡大局面は長く続いたが、財政再建は後回しにされた。景気腰折れを恐れた政権は、14年4月に消費税率を5%から8%に引き上げた後、10%への引き上げを当初予定の15年10月から19年10月まで2度も延期。年々膨張する社会保障費が財政を圧迫した。「第2の矢」として財政出動を繰り返し、歳出削減は進まなかった。
そこにコロナ禍が襲い、政権は総額200兆円超という空前の経済対策を打つ事態に陥った。12年度末に705兆円だった国債発行残高は、20年度末には964兆円と国内総生産(GDP)の1.8倍に膨らむ見通し。財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の榊原定征会長は「平時に財政健全化を進める重要性が再確認された」と指摘したが後の祭り。大手格付け会社フィッチ・レーティングスは29日、日本国債の格付け見通しを「安定的」から「弱含み」に引き下げ、急速な財政悪化に警鐘が鳴り始めた。
◇第3の矢は飛ばず
本来、金融・財政政策で時間を稼いでいる間に成長戦略や規制緩和を進め、経済の実力を示す潜在成長率の底上げを図るべきだが「期待された第3の矢は飛ばなかった」(市場関係者)。コロナ禍は社会全体のデジタル化の遅れもあらわにした。
日本経済研究センターによる民間エコノミスト調査では、4~6月期の実質GDPは平均値で前期比年率23.5%減と記録的な落ち込みが予想される。30日の経済財政諮問会議で「厳しい状況にある経済をしっかりと回復軌道へ戻すことが喫緊の課題だ」と強調した安倍首相にとって最大の正念場を迎える。(2020/07/30-19:21)
FOCUS: With Japan Economy Faltering, Abenomics on Brink of Collapse
With a cloud of uncertainty hanging over the future of the Japanese economy amid the coronavirus crisis, the Abenomics economic policy framework launched by Prime Minister Shinzo Abe when he returned to power in late 2012 is on the brink of collapse.
The Cabinet Office officially confirmed Thursday that the Japanese economy reached a peak in October 2018 in the 71st month of expansion after its start in the month of the second Abe government's inauguration, failing to renew its postwar record uninterrupted growth run of 73 months marked in the "Izanami" boom through February 2008.
Although the government aims to achieve economic growth in fiscal 2021, it is unclear whether the COVID-19 epidemic and the ensuing economic slowdown will be settled by then.
Growth Not Felt on Ground
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