内密出産、進まぬ法整備 子の「知る権利」担保に課題―赤ちゃんポストの病院・熊本
乳幼児を匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を運営する慈恵病院(熊本市)が、妊婦が匿名のまま病院で出産できる「内密出産」の受け入れを始めてから1週間。導入の背景には、経済的な困窮などで育てられない母親が、1人で産み落とす孤立出産が相次ぐ現状がある。病院は独自に子どもの出自を知る権利を担保する方針だが、専門家は「民間任せでは不安が残る」として、法整備の必要性を訴える。
「出産後、自分でへその緒をハサミで切る事例もあった」。2017年9月、ゆりかごの運用を検証する熊本市の専門部会は報告書で、孤立出産の危険性を指摘した。出自を知る権利にも言及し、国に内密出産制度の検討を促した。
内密出産は、ドイツでは14年に法制化された。母親は出産時に身元を記した書類に封をして行政機関に預け、匿名で出産。子は養子として育てられ、16歳になると書類を見る権利を得る。実母が閲覧を拒否した場合、家庭裁判所が判断する。
慈恵病院は17年12月、ドイツをモデルとした制度の導入検討を公表し、市と協議を重ねてきた。市は「自治体や民間病院で解決できる課題ではない」として国に法整備検討を要望。厚生労働省は18、19年度事業でドイツなど諸外国の事例を調査・研究中だ。今回、病院は職員1人が親の身元を保管し、子は一定の年齢に達すると出自を知ることができる仕組みで導入に踏み切った。
これに対し、奈良大の床谷文雄教授(民法)は「母親のプライバシーと子の知る権利という利害対立への対応が保障されていない。本来は行政が担うべきだ」と指摘。市は「出自を知る権利をどう担保するかは社会的な合意が必要だ」とする。
戸籍など法的手続きも不透明だ。親の身元が分からない「棄児」の戸籍は、首長が名付け親になり単独で編製される。法務局は「無戸籍になることは想定されない」との見解を示し、内密出産の場合も踏襲されるとみられるが、市は対応を明らかにしていない。
蓮田健副院長は「母子の安全が最優先。事例を重ねないと法整備は進まない」と話す。厚労省母子保健課は「諸外国や国内の現状把握に努めている」とし、自治体に対応を委ねる方針。大西一史市長は「現行法における課題の有無を確認する」とコメントしている。(2019/12/15-08:00)
FOCUS: Japan Slow in Setting Law to Deal with Isolated Birth
Japan is slow in setting legislation to deal with isolated childbirth, an issue highlighted by the recent launch of a confidential birth program by a hospital in Kumamoto.
In the southwestern Japan city, Jikei Hospital this month started the program allowing women to give birth while keeping their names secret.
The hospital known for its "Konotori no Yurikago" (stork's cradle) baby hatch, where parents can leave their babies anonymously, made the fresh move in a bid to rescue women forced into isolated birth because of financial or other problems.
In September 2017, a report compiled by a city task force on the hospital's baby hatch pointed to the danger of isolated birth, citing a case in which a women cut the umbilical cord with scissors on her own after delivery.
The report also took up children's rights to know their origin and called on the central government to consider creating a system for confidential birth.
最新ニュース
-
新戦力の才木、森下ら奮闘=日本、若手が貴重な経験―野球プレミア12
-
副知事が出馬表明=秋田知事選
-
竹田、8勝で年間女王=山下は3年連続60台―女子ゴルフ全日程終了
-
山梨も3000~5000円で検討=富士山通行料、協力金と一本化
-
吉田、山根はフル出場=MLSプレーオフ
写真特集
-
【野球】慶応大の4番打者・清原正吾
-
【競馬】女性騎手・藤田菜七子
-
日本人メダリスト〔パリパラリンピック〕
-
【近代五種】佐藤大宗〔パリ五輪〕
-
【アーティスティックスイミング】日本代表〔パリ五輪〕
-
【ゴルフ】山下美夢有〔パリ五輪〕
-
閉会式〔パリ五輪〕
-
レスリング〔パリ五輪〕