好奇心が導いた栄誉 真鍋さん、気候変動研究「楽しんだ」―ノーベル物理学賞
ノーベル物理学賞を受賞した真鍋淑郎さん(90)は、好奇心に突き動かされて研究にのめり込んできた。「天気予報の社会への貢献はノーベル賞を与えても良い」。かつて講演で語った言葉が現実となった。
親戚に医者が多く、当初は医学の道を志した。しかしカエルの解剖に失敗し、化学実験では爆発させたことも。あきらめて気象学を学び始めた。
転機は東京大の博士課程にいる時に訪れた。論文を読んだ米国気象局(当時)のジョセフ・スマゴリンスキー博士が「一緒に研究しないか」と勧誘。当時は博士号を取得しても日本国内に働き口が少なく、1958年に渡米した。
まだ、日本の気象庁に大型コンピューターが無かった時代に、米国では最新鋭のものが自由に使えた。上司のスマゴリンスキー博士は「私が研究費を調達するから、雑用は一切やらなくてよろしい」と話し、真鍋さんは後年、「とにかく研究に没頭できた」と振り返った。
米国のライフスタイルも性に合った。受賞決定後の記者会見で「日本人は他人を邪魔しないよう常に気をもんでいる」と指摘。米国ではやりたい研究を何でもできたとし、「私には調和的に生活する能力がない」とも語った。
67年に「1次元放射対流平衡モデル」を発表。大気を一つの柱に単純化してシミュレーションする画期的な手法を開発した。この時、好奇心から二酸化炭素やオゾン、雲などあらゆる要素を変化させて気温の変化を分析。二酸化炭素の濃度が倍増すると、気温が約2度上昇するという結果が得られた。地球温暖化予測の先駆けとなる成果だった。
「道草をしたことが、私の温暖化研究のスタートになった」と真鍋さん。これまでの道のりを「気候変動の研究を本当に楽しんだ。私の研究はすべて好奇心だけに動かされてきた」と表現した。(2021/12/07-13:28)
Nobel Laureate Manabe Driven by Curiosity
Japanese-born Nobel laureate Syukuro Manabe's devotion to climate change research has been driven by his sheer curiosity.
"I really enjoyed studying climate change," Manabe, a 90-year-old senior meteorologist at Princeton University who received his medal for this year's Nobel Prize in Physics on Monday, once said.
"Curiosity is the thing which drives all my research activity."
Born into a family where many of his relatives were doctors, Manabe initially pursued a career in the medical field.
However, as a young student, he failed in his frog dissection assignment and once caused an explosion during a chemistry experiment. He quickly gave up his medical career and began studying meteorology instead.
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