2021.03.11 20:33Nation

祭りでつながる古里 石巻出身の永沼さん、10年「できることやる」―東日本大震災

 「地元のためにできるだけのことをする。それでこの10年やってきた」。仙台市に住む永沼梅夫さん(70)の出身地、宮城県石巻市の長面地区は、東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受け、人が住めない土地になった。妻と両親が行方不明で、友人とも離ればなれになったが、伝統行事の祭りが今も古里との縁をつないでいる。
 「定年退職して、さあこれからだという時に震災が起きた」。穏やかな入江と青々とした松原。生まれてから60年を過ごした長面地区であの日、巨大な津波が何もかもをのみ込んだ。犠牲者は100人超。約4年の間、水が引かず、住宅を建てられない災害危険区域に指定された。
 永沼さんは、同県女川町の職場から駆け付けた市の指定避難所で、家族3人が自宅ごと流されたと聞いた。「あぁ、それはもう駄目だ」。道は寸断され、捜しにも行けなかった。
 市内の親族宅に約2年身を寄せた後、娘が暮らす仙台に自宅を再建。「本当は同じ場所に建てたかった。津波で田舎が壊されてなくなるなんて、考えてねっちゃ」とため息をつく。
 長面には神社の伝統行事として、季節の祭りがある。夏はみこし、秋は神楽、冬には顔にすすを塗り付け合う「アンバサン」。永沼さんや友人たちは「地元を元気づけたい」との思いで、津波を免れた神社で開催を続けた。祭りの日だけささやかなにぎわいが戻り、住民が再会を喜ぶ場となっていった。
 永沼さんは、仙台から泊まりがけで通い続けた。準備に片付け、おはやしの笛も大事な役目だ。何よりも酒を酌み交わしながら、友人と過ごせる時間が待ち遠しい。「子どもの頃から一緒。話を分かってくれる」と頬が緩む。
 しかし、家族が見つかっていないことを考えるたび、一人震災の渦中に取り残されたように感じる。「小さな子どもや若い人もたくさん亡くなった。母ちゃんは60まで生きたから、良かったのかな」とつぶやく。
 10年が過ぎ、「いろんな団体や集まりが解散しつつある。俺たちもどうなるのかな」と寂しさを感じる。一方、祭りに市外から見物客が訪れることもあり、地元を誇らしく思う。永沼さんは今年、神社の役員を任された。仲間たちに、まだまだ必要とされている。(2021/03/11-20:33)

2021.03.11 20:33Nation

10 Years On: Festivals Keeping Evacuee's Ties with Hometown Alive


Despite losing his family and home to the massive tsunami 10 years ago, Umeo Naganuma is maintaining his connections with his hometown through traditional festivals.
   "I've spent the last 10 years doing all I can for my hometown," Naganuma, 70, from the Nagatsura district of Ishinomaki, a Pacific coastal city in Miyagi Prefecture, said.
   Naganuma, who currently lives in the prefectural capital of Sendai, said he was preparing for life after retirement when the disaster struck. He had called Nagatsura, with its calm inlets and lush pine groves, home for 60 years.
   But the March 11 earthquake-triggered tsunami swallowed up the district, taking the lives of over 100 people and leaving the area saturated with water for about four years, prompting the local government to declare it a disaster danger zone and rendering it uninhabitable.
   Naganuma rushed from his workplace in the neighboring town of Onagawa to a designated evacuation center in Ishinomaki and learned that his home had been swept away, with his wife and parents still inside.

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