日銀の利上げ判断に影響も=「トランプリスク」急浮上

日銀は昨年3月にマイナス金利政策を解除して以降、断続的な利上げに踏み切り、前回1月会合では政策金利の0.5%程度への引き上げを決めた。ただ、トランプ米政権が高関税政策を乱発する方針を示したことで、世界経済の不確実性が急速に高まっている。日銀は「トランプリスク」に警戒感を強めており、利上げ判断に影響が及ぶ可能性がある。
「米通商政策が国内の物価・経済見通しにどのような影響を及ぼすか精査して政策を決めていく」。植田和男総裁は19日の記者会見で、トランプ大統領の高関税政策が国内外の経済に悪影響を及ぼすリスクを慎重に見極める考えを示した。トランプ氏は自動車への追加関税や、相手国と同水準の関税を課す「相互関税」を日本にも適用する可能性がある。実際に発動されれば、株価の急落など金融市場の混乱は不可避だ。
一方、2025年春闘の連合の第1回集計結果では、平均賃上げ率が5.46%と昨年同時点を上回った。植田総裁は集計結果について「オントラック(想定通り)の中でもやや強め」と評価。さらなる利上げのタイミングを模索する構えを崩していない。
市場では追加利上げ観測の広がりから長期金利は今月に入って1.5%超に上昇し、16年5カ月ぶりの高水準を記録。昨年1ドル=160円台を突破した過度な円安も修正された。
日銀は景気を刺激も冷やしもしない「中立金利」について、最低でも1%程度と推計しており、現在の政策金利水準からまだ利上げ余地は残されている。ただ、報復関税の応酬で世界経済が減速すれば、利上げ戦略の修正を迫られかねない。
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