トランプ王朝の「黄金時代」=米次期政権
米大統領に返り咲いたドナルド・トランプ氏(78)の就任演説での語り口は、8年前の1期目に比べ驚くほど落ち着いていた。「米国の黄金時代が今始まる」と高らかに宣言し、公約実現を一つ一つ約束していく。米メディアによると、トランプ氏の陣営は昨年の大統領選前から、この日のために周到に準備を重ねてきた。
ただ、トランプ氏が強調した「常識の革命」の主な内容は、軍を動員した不法移民対策の強化、パリ協定離脱など環境規制の緩和、諸外国への一方的な関税などだった。「強さ、繁栄、尊敬を取り戻す」ことを目標とする復古主義的な意味合いが強い。
では、トランプ氏がノスタルジアを抱いている特定の時代や状況はいつなのだろうか。第2次大戦後、米国が他国をはるかにしのぐ軍事力と経済力によって、世界の覇権国としての地位を享受した時期は確かにあった。しかし、それは米国がルールに基づく国際秩序を主導したからこそ実現したもので、国益だけを優先して獲得できた地位ではない。
トランプ氏の危うさは、少数の「忠臣」と少数の富裕層に囲まれていることからも感じられる。就任式後、一族らがワシントン市内の施設に勢ぞろいした光景は、「王朝」の始まりのようにも見えた。トランプ氏は歓声の中、バイデン前政権の政策を転換する大統領令に次々と署名した。
大統領令は全てを可能にする打ち出の小づちではなく、政権が交代すれば打ち消される行政命令にすぎない。トランプ氏が再び手に入れた力で一方的に主張を押し通すだけでは、「王朝」に黄金時代が訪れても輝きはいずれ失われ、米国の分断が一段と深まるだけだろう。
[時事通信社]
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