米新政権・識者談話
◇「米国第一」、1期目より着実
小谷哲男・明海大教授(安全保障)の話 トランプ氏の就任演説は基本的に1期目から続く「米国第一」に基づく内容だったが、1期目を経験したこともあり、入念に準備した上で自信を持って内政も外交も進めるという姿勢が表れていた。「トランプ党」となった共和党と、保守派が多数派の連邦最高裁の支援を受けながら、1期目より着実に米国第一主義を実行していくだろう。
「メキシコ湾をアメリカ湾に」「領土を拡大」といった表現からも、米国の利益拡大のため大胆な政策を取ることがうかがえる。高めのボールを投げておいて、実際にはディールの中で、例えば中国企業との関係を断つ代わりに米企業との関係構築を求めるというのが、落としどころになると考えられる。
初日の大統領令では日本の名前が挙がらなかったが、いずれ貿易と防衛に関して一定程度の圧力がかかるだろう。自動車の輸出規制や米農産品の受け入れで、対応を考える必要がある。アラスカでの化石燃料の採掘や開発に力を入れるということなので、そうした開発への投資やエネルギー購入という形で、ウィンウィンの関係がつくれるのではないか。恐らく求められるであろう防衛費増額についても、為替と購買力を反映した装備品調達見直しを行うことで、圧力をかわすことが必要になる。
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◇「力とディール」前面に
西山隆行・成蹊大教授(米国政治)の話 トランプ氏の就任演説は、国民の分断を背景に、選挙戦と同じような手法で統治を行うという意志の表明だった。力に基づきディールで物事を進める姿勢が前面に出され、米国第一主義というより「トランプ第一主義」のように見える。
エネルギーの国家非常事態宣言や外国歳入庁の創設といった政策がどこまで本音なのか、それともディールの材料なのか、判断するのは難しい。トランプ氏に明確な政策のビジョンがあるとは考えづらく、どう転んでも自らに得となる状況をつくろうとしている印象を受ける。
外交に関しては、圧倒的な軍事力を背景に領土を広げるかのような発言があった。これまでもパナマ運河やデンマーク領グリーンランドを領有するといった発言を繰り返してきたが、実際には難しい。その発言によって他の目的を実現する狙いがあるのだろう。力をもって圧力をかければ政策が実現し、自分の手柄にできるという考えもあるようだ。
対外的な影響としては、権威主義的な国が傍若無人とも言えるような行動を取る余地を拡大させることが懸念される。東南アジアやアフリカ、中南米といった地域で、権威主義的な国の影響力が徐々に増大するきっかけとなる可能性も十分あるだろう。
[時事通信社]
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