「米国の例外主義」なき世界=トランプ氏の外交政策を聞く―東アジア、ウクライナ、中東
【ワシントン時事】来年1月のトランプ次期米政権発足で、タフツ大学フレッチャースクールのドレズナー教授(国際政治)は、世界の盟主として平和への使命を負う「米国の例外主義が失われる」と指摘する。対外政策が「自国第一」一辺倒になるためだ。予断を許さない東アジア、ウクライナ、中東の3地域情勢への影響について、政権1期目の元高官らに話を聞いた。
◇「封じ込め」か「取引」か―中国
ソーントン元国務次官補代行(東アジア・太平洋担当) トランプ次期政権が中国を封じ込めるのか、取引を望むのかが現時点で不明だ。政権内には双方の勢力がいる。バイデン政権は「米中関係の管理」に重点を置いたが、トランプ氏は揺さぶったり圧力を強めたりして、貿易問題で何らかの合意を交渉で得ようとする可能性がある。
台湾問題を巡っても、政権内で台湾支援派と中国との衝突回避派の間で意見が分かれるかもしれない。「予測不可能」なトランプ氏にとって、台湾防衛に対する「戦略的曖昧さ」はブランドとなり得るが、情勢を慎重に管理できるかも問われることになる。
トランプ氏は日米同盟の重要性を理解していると思う。ただ、貿易問題や米軍駐留経費の負担問題が浮上する恐れはある。
◇プーチン氏と交渉の意思必要―ウクライナ
ビーブ元中央情報局(CIA)分析官 ウクライナもロシアも戦争で完全勝利できる情勢になく、トランプ氏は妥協によって戦争を終結させようとしている。当事国同士の協議と併せて、信頼醸成や軍備管理など巡って米国とロシアが広範囲な交渉を必要とする。
ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟は、米上院の承認が必要で実現は難しい。ウクライナの安全は防衛力強化と復興支援に西側諸国を巻き込むことで保障し、妥協的な解決を図るしかない。
バイデン大統領はこの戦争をウクライナとロシアの2国間問題として捉え、ロシアのプーチン大統領と直接交渉をしてこなかった。トランプ氏は明らかに交渉のテーブルに着く考えで、それが成功には必要な要素だ。
◇アブラハム合意拡大へ―中東
シェンカー元国務次官補(中東担当) トランプ政権で中東問題担当特使を務めるウィトコフ氏が既に、現地情勢の分析と人脈づくりを始めている。紛争終結に向けては、ビジネスマンとして「取引」を探るという型破りなものになるかもしれない。
パレスチナ問題を巡っては、政権1期目に結ばれた(イスラエルとアラブ諸国の正常化を進める)アブラハム合意を拡大し、サウジアラビアと協力して軌道修正を図るだろう。エジプトやヨルダンなど関係国にも負担の共有を求める。イスラエルはトランプ氏の4年間を念頭に敏感に対応しようとするのではないか。
トランプ政権は、地域を不安定化するイランへの圧力を最大限にする可能性がある。イランの石油を購入している中国が戦略的な課題だ。
[時事通信社]
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