上げ幅や時期、論点多岐に=「103万円の壁」見直し本格化
政府が閣議決定した総合経済対策は、2025年度税制改正論議を前に、所得税の課税最低基準である「年収103万円の壁」を引き上げることを明記した。自民、公明両党の税制調査会は来週から議論を本格化させるが、引き上げ幅や適用開始時期、財源確保など、論点は多岐にわたる。
「壁」への対応で最大の焦点は、引き上げ幅だ。国民民主党は、基礎控除(48万円)と給与所得控除(55万円)の合計額103万円を最低賃金の伸びに合わせて178万円まで上げるよう要望。ただ、政府・与党内では、物価上昇率など他の指標を基準にすべきだとの指摘も上がる。自民党の宮沢洋一税調会長は、指標に関して「何が妥当なのか、国民民主の意見も伺いながら考えていきたい」と語る。
政府は、国民民主の要求通りに控除を拡大すれば、国と地方の合計で7兆~8兆円と巨額の税収減となり、このうち5兆円規模が地方の負担になると試算した。この試算は、基礎控除だけを75万円分拡大し、地方税の住民税でも基礎控除を同様に引き上げることが前提だ。
自治体には減収への懸念が広がっており、基礎控除と給与所得控除の双方を引き上げるのか、基礎控除拡大は所得税だけではなく住民税も対象とするかも大きな争点となる。
国民民主が目指す「手取りを増やす」の実現時期も注目点だ。所得税は、1月から12月までに得た所得に課される。このため、来年度税制改正に盛り込まれた「年収103万円の壁」見直しの内容を盛り込んだ関連法案が次期通常国会で成立しても、実施されるのは最も早くて26年1月からとの見方が出ている。
このほか、控除額の一律引き上げは高所得者ほど減税額が大きくなるため、控除の対象者に所得制限を設けるかどうかも論点の一つだ。
翌年度以降の税制改正の方針を示した税制改正大綱は例年12月中旬ごろまでにまとまる。ただ、宮沢氏は「壁」の論点は「大事なことが全部残っている」としており、国民民主との調整も含め難しい作業になりそうだ。
[時事通信社]
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