監視徹底、言論統制加速=口閉ざす市民、同化政策に無力感―ウルムチ騒乱15年・中国
【ウルムチ時事】中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで、漢族とイスラム教徒の少数民族ウイグル族が衝突した大規模な騒乱から5日で15年。習近平政権は監視の徹底と言論統制の加速で表面上の「安定」を維持してきた。市民は事件について一様に口を閉ざし、ウイグル族は同化政策への無力感を抱いている。
6月下旬、記者がウルムチの空港に到着すると、飛行機を降りた時点から当局者とみられる複数の男性による尾行が始まった。騒乱の現場となったウルムチ市中心部の人民広場では、高齢者がカードゲームに興じる一方、多数の警察車両が配置され、私服・制服の要員が警戒に当たっていた。
街中には屋台や路地裏に至るまで監視カメラが設置され、タクシー内の会話は全て録音される。モスク(イスラム礼拝所)は中国風の屋根になっていたり、街路樹で不自然に覆われたりし、いずれも中国国旗が掲げられていた。
「話すことは許されない。録音されている」。3歳からウルムチに住んでいるという漢族のタクシー運転手の男性は、事件について問われると車内の監視カメラを指し、慌てて口をつぐんだ。10年前に農村から移り住んだ漢族の女性も、「事件については知らない。ここに悪い人はいない」と言葉少なに語った。
2015年からウルムチで暮らすカシュガル出身のウイグル族の男性(43)は、「今は経済も良くなり、漢族との関係はいい」としつつも、「全員が不満を持っていないわけではない」と声をひそめる。3人の子どもはウイグル語を話せるが、書くことはできないといい、「民族の文化は守らないといけないが仕方がない」と肩を落とした。
習政権は「反テロ」の名の下にウイグル族への締め付けを強めてきた。大規模な経済支援で「脱貧困」をアピールする一方、「宗教の中国化」を打ち出し、モスクの改修や中国語の教育など漢族との同化政策を推進。自治区内では多くのウイグル族が不当に収容施設に拘束されていると指摘され、国際社会の非難が高まっている。
[時事通信社]
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