2024-04-22 14:46TOPICS

運航会社社長の捜査続く=遺族は訴訟で追及―知床観光船事故、23日で2年

観光船「KAZU I(カズワン)」=2022年4月(知床遊覧船ホームページより)
観光船「KAZU I(カズワン)」=2022年4月(知床遊覧船ホームページより)

 北海道・知床半島沖で起きた観光船「KAZU I(カズワン)」の沈没事故から、23日で2年となる。海上保安庁は運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長(60)について、業務上過失致死などの容疑で捜査しているが、立件の見通しは立っていない。遺族らは民事訴訟でも社長らの責任を追及している。
 事故は2022年4月23日午後に発生。カズワンは斜里町のウトロ港を出港し、消息を絶った。乗客乗員計20人の死亡が確認され、乗客6人は行方が分かっていない。
 運輸安全委員会は昨年9月に公表した報告書で、沈没の原因は船首甲板部のハッチからの浸水と特定。同社は安全運航に必要な人材をそろえておらず、船体や通信設備の保守整備も不十分で「安全管理体制が存在していなかった」と指摘した。
 海保は事故後、運航会社の事務所などを家宅捜査すると共に、桂田社長を任意で事情聴取。ただ、当時の状況を最もよく知る船長が亡くなっていることから、立件のハードルは高い。捜査関係者は「運輸安全委の報告書も社長側の弁解材料になりかねない」と警戒感を示す。立件の先の起訴や裁判を見据え、「船の浸水実験などもして、もっと詳細を詰めなければ」と慎重な姿勢を崩さない。
 遺族らは民事訴訟での責任追及に動きだしている。甲板員だった曽山聖さん=当時(27)=の両親は昨年3月、桂田社長が周囲の助言を無視して出航させたことなどが事故の原因だとして、社長と会社に損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。社長側は出航は強要しておらず、船長らが運航中に引き返すなどの判断をしていれば事故は回避できたと主張している。
 乗客の遺族ら30人は、5月にも札幌地裁で桂田社長と同社を集団提訴する方針。弁護団によると、原告には行方不明者の家族も含まれ、死亡認定の手続きをした上で訴訟に参加するという。 

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