2024-03-26 14:54政治

「歯止め」実効性に疑問=戦闘機輸出、国会関与なく転換

 政府は26日、国際共同開発装備品の第三国移転に関し、英国、イタリアと開発する次期戦闘機の輸出を解禁した。政府・与党は「歯止め策」による厳格運用を主張するが、実効性には疑問が残り、紛争の助長につながる恐れは拭えない。武器輸出を巡る大転換にもかかわらず、国会が関与しない政策決定の在り方を問題視する声もある。
 ◇「抑制」印象付け
 林芳正官房長官は26日の記者会見で、「国会での質疑を通じ、第三国へ移転する必要性等について説明してきた。国民の一層の理解を得るべく、丁寧な説明を行っていきたい」と強調した。
 一連の経緯からは政府のずさんさも浮かび上がる。岸田文雄首相の国会での説明によると、2022年12月に3カ国共同開発を決めた段階では、日本からの輸出が必要になると認識していなかった。その後、価格低減を重視する英伊と同じ立場を取る必要性が「明らかとなった」といい、公明党幹部は「見通しが甘い」と不快感を示した。
 ただ、英伊と事前の交渉に携わった政府関係者からは「輸出しないなら英国は乗ってこなかった」(防衛省)、「輸出は大前提」(外務省)との声も聞かれる。一部に認識はあったとみられ、政府内の意思疎通が不十分だった可能性がある。
 政府は抑制的な運用を印象付けようと腐心。今回決めた次期戦闘機の輸出方針と個別の輸出案件を閣議に付す「二重の閣議決定」と、対象を次期戦闘機に絞り、輸出先を防衛装備品・技術移転協定締結国に限定した上で戦闘中の国を除外する「三つの限定」を歯止めとアピールしている。
 防衛装備移転三原則の運用指針は国家安全保障会議(NSC)の決定事項で、手続きに国会の関与はない。NSCから閣議へ「格上げ」しても、政府・与党の「密室協議」(共産党・小池晃書記局長)で完結する流れは変わらない。
 戦闘機以外の装備品輸出も、運用指針に追加すれば拡大可能だ。自民党国防族は「追記すればいいだけだ」と事も無げだ。
 ◇紳士協定
 輸出できる国の広がりも不透明だ。協定締結国は現在15カ国だが、国家防衛戦略は締結「推進」を掲げており、防衛省によると現在も複数の国と交渉中という。
 戦闘中の国を除外しても、将来までは見通せない。移転協定は侵略などに用いないよう義務付けているが、仮に輸出先がこれに反して侵略や国際人道法違反の攻撃を起こした場合、使用される恐れは否定できない。
 政府はこの場合、相手国に是正要求し、部品供給を止める方針。木原稔防衛相は国会で「(憲法の)平和主義との関係で問題は生じない」と答弁したが、英伊から部品を調達するなどの手段で使用が継続される可能性は残る。防衛省関係者は、輸出後の管理は「あくまで紳士協定だ」と述べ、限界があることを認めた。 
[時事通信社]

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