対馬・観音寺仏像盗難事件 (3/5)
韓国・大田地裁の判決後、記者団の取材に応じる浮石寺の住職(中央)=韓国・大田市【EPA時事】 長崎県対馬市の観音寺から2012年に盗まれ、韓国に運び込まれた県指定文化財の仏像「観世音菩薩坐像」について、「かつて所蔵していたが略奪された」と主張する韓国の寺が韓国政府を相手取り、仏像を引き渡すよう求めた訴訟で、大田地方裁判所は17年1月26日、韓国の寺の所有権を認め、仏像を引き渡すよう命じる判決を下した。日本政府は日本への返還を求めてきたが、一層遠のく見通しだ。 提訴していたのは、中部・瑞山にある浮石寺。14世紀に朝鮮半島などに出没していた海賊、倭寇によって略奪された可能性が高いと主張。窃盗団から没収され、大田の国立文化財研究所に保管されている仏像の引き渡しを求めていた。 大田地裁は判決で「仏像は贈与や売買など正常な方法ではなく、盗難や略奪で(対馬市の観音寺に)運ばれたとみるのが妥当だ」とし、「仏像は浮石寺の所有と十分に推定できる」と判断。「(政府は)浮石寺に引き渡す義務がある」と指摘した。 大田地裁は13年、観音寺が仏像を正当に取得したことが証明されるまで、日本側への返還を差し止める仮処分を出していたが、効力は切れていた。 12年に盗まれた仏像2体のうち、対馬市の神社が所有していた国指定重要文化財「銅造如来立像」は15年に返還され、同市の県立対馬歴史民族資料館に引き渡された。(2017年01月26日)