対馬・観音寺仏像盗難事件 (2/5)
韓国中部・大田高裁の裁判に出廷後、取材に応じる長崎県対馬市にある観音寺の住職田中節竜さん【時事通信社】 長崎県対馬市の観音寺から2012年に韓国人窃盗団が盗んで韓国に持ち込んだ県指定文化財の仏像「観世音菩薩坐像」をめぐり、韓国中部・大田高裁で22年6月15日開かれた裁判に、観音寺の住職田中節竜さん(46)が初めて出廷した。田中さんは「所有権はわれわれにある」として、一日も早い返還を訴えた。 仏像は韓国政府が保管している。日本政府は引き渡しを求めてきたが、韓国中部・瑞山の浮石寺が、14世紀に日本人主体の海賊「倭寇」によって持ち去られた可能性が高いと所有権を主張して提訴。大田地裁は17年1月、浮石寺の言い分を認める判決を出し、被告の韓国政府が控訴していた。 田中さんはこの日、仏像について「檀家(だんか)の心のよりどころだった」と説明。「1953年に観音寺が宗教法人化して以降、明確な意思を持って所有し、日本の民法でも韓国の民法でも取得時効が成立している」と強調した。さらに、仏像は16世紀に観音寺を創建した僧侶が朝鮮半島に渡って正当に譲り受け、持ち帰ったと言い伝えられていると訴えた。 これに対し浮石寺側は、16世紀に対馬に持ち込まれた経緯が「適法だったという証拠があるのか」と疑問を呈した。(2022年06月15日)