「先送りしてきた課題、議論を」 防災専門家、室崎神戸大名誉教授―17日に阪神大震災30年
阪神大震災から17日で30年を迎える。防災研究の第一人者で、自身も震災を経験した室崎益輝神戸大名誉教授(防災計画)は、震災後に防災意識が向上した一方、避難所の劣悪な環境などは変わっていないと指摘。「先送りしてきた課題に向き合い、議論すべき時だ」と訴える。
「あまりにひどくて、自然に涙が出た」。震災当日、会議で大阪にいた室崎さんは、翌日神戸に戻りショックを受けた。家々が無残に壊れ、風景が一変していた。研究者として被災地に赴いては写真を撮って調査してきたが、自らが当事者になるとカメラを向けることができなかった。
発生前から兵庫県や神戸市の防災に関わっていたが、「思っていた被害をはるかに超えていた」と反省した。過去の記録から最大でも震度5強と想定していたが、実際は震度7。「未来に起こり得る可能性を考えなくてはいけないと分かった」。震災後は大学のゼミも一般に公開し、講演会などで市民と直接話す機会を増やした。
震災では、地域コミュニティーの大切さを痛感した。消防が機能しない中、倒壊した家屋から人を助け出し、消火活動に当たったのは地域の人たちだった。市民が普段から自発的に防災を考える「地区防災計画」は、その後全国に広がった。
プレハブではない木造の戸建て仮設住宅が造られるようになり、医療や土木の専門的ボランティア団体が増えたのは震災後の進歩だと評価する。一方で、避難所の環境がいつまでも変わらないことを問題視。被災者は我慢しなければいけないという風潮があり、改善の機運さえないと憂える。
震災から30年がたつが、神戸市内は過密状態が解消されず、火事になりにくい街にする計画は進まない。生活の再建を優先し、先送りしてきた課題が残されたままになっている。
「震災は社会の課題に気付かせてくれる」と語る室崎さん。能登半島地震では、過疎地対策の不足を突き付けられたという。「次は南海トラフ地震が起き、30万人が死んでから気付くのか。市民それぞれが地域の課題にしっかり向き合い、全力で議論する時だ」と力を込めた。(2025/01/16-07:06)
30 Years On, Expert Calls for Discussions on Disaster Measures
A leading researcher in disaster reduction who experienced the powerful earthquake that hit western Japan 30 years ago has called for discussions on disaster management problems that still remain unresolved.
"It's time to face up to the issues that have been back-burnered and discuss them," said Yoshiteru Murosaki, professor emeritus of disaster prevention planning at Kobe University.
He mentioned poor environments at evacuation centers as one of the problems persisting since the Jan. 17, 1995, quake, which hit hard areas including Kobe, the capital of Hyogo Prefecture, while noting an improvement in disaster prevention awareness.
Murosaki, who was in neighboring Osaka Prefecture for a conference on the day of the temblor, remembers the shock he had when he returned to Kobe the following day. "It was so bad that I started shedding tears," he said.
Many house were brutally damaged, and the townscape had completely changed. Although he had visited disaster areas and taken pictures as part of his research, he was unable to take photographs of the devastation he was personally a part of.
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