2020.03.06 07:11Nation

訴訟長期化、疲弊する原告 集団ADRも機能せず―福島

福島地裁の判決後、記者会見する福島県の「中通り」住民訴訟の原告ら=2月19日、福島市

福島地裁の判決後、記者会見する福島県の「中通り」住民訴訟の原告ら=2月19日、福島市

 東京電力福島第1原発事故をめぐっては、避難者らが相次いで東電を提訴したが、甚大な被害の立証に時間がかかり、訴訟が長期化している。東電は早期解決を図るため、裁判外紛争解決手続き(ADR)での和解案尊重を掲げる一方で、各地の集団ADRでの和解案を拒否。震災から9年を経ても先の見えない現状に、多くの原告は疲弊している。
 2016年4月に福島地裁に提訴した福島県の「中通り」住民54人による訴訟では、長期化を避けるため原告側が東電に和解を働き掛けた。地裁は19年12月に和解勧告したが、東電が和解案を拒否。今年2月に損害賠償を命じる判決が言い渡されると、仙台高裁に控訴した。
 原告の植木律子さん(73)は「東電の身勝手な姿勢には失望した」と憤る。都内で教員をしていたが、定年後のついの住み家として、07年に夫婦で福島市に移住。家庭菜園を楽しむ日々だったが、原発事故後は庭の除染を余儀なくされ、放射線への不安にさいなまれた。「常に訴訟のことを考え、悲しみや苦しみを全て訴えた。これ以上できることはない」と途方に暮れる。
 福島県浪江町の約1万5000人が13年に申し立てた集団ADRは、「中間指針を上回る一律の賠償には応じられない」として東電が和解案を6度拒否した末、18年4月に打ち切られた。この間には864人が亡くなったといい、その後の訴訟に参加した町民は約630人にとどまる。
 浪江町は東電が和解案に応じやすい個別ADRへの移行も勧めるが、希望者は約1000人のみ。町賠償支援係の担当者は「先の見えない避難生活にADR打ち切りが重なり、町民は心身共に疲れ切っている。東電は被害救済のため集団ADRに応じるべきだった」と話した。
 東電が集団ADRを拒否する姿勢は18年から顕著になり、同年末までに計24件が打ち切りとなった。19年1月には県内の6弁護団が中間指針の見直しや東電への指導を求め、政府の原子力損害賠償紛争審査会に申し入れた。(2020/03/06-07:11)

2020.03.06 07:11Nation

9 Years On: Plaintiffs Exhausted from Prolonged N-Accident Suits


Many plaintiffs are exhausted from their prolonged lawsuits over Japan's worst nuclear accident in Fukushima Prefecture, nine years after the catastrophe triggered by the March 2011 earthquake and tsunami.
   A series of suits have been filed mainly by people who were forced to evacuate from their homes near Tokyo Electric Power Company Holdings Inc.'s Fukushima No. 1 nuclear power plant because of the unprecedented triple-meltdown accident there.
   The suits have been prolonged due chiefly to the difficulty of establishing evidence for huge damages caused by the accident at the plant in the northeastern prefecture.
   TEPCO says it is willing to settle damages suits through an out-of-court settlement mechanism known as alternative dispute resolution.
   But actually, TEPCO has rejected many settlement proposals made through ADR procedures, confusing many plaintiffs.

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