2023.12.05 16:58World eye
イスラエル奇襲を首謀か ハマスのガザ地区指導者シンワル氏
【パレスチナ自治区AFP=時事】イスラム組織ハマスのパレスチナ自治区ガザ地区トップ、ヤヒヤ・シンワル氏(61)は、ハマスの治安機関を率いたほか、イスラエルの刑務所で長らく収監された後、指導者の座に就いた。(写真は、イスラム組織ハマスのガザ地区指導者ヤヒヤ・シンワル氏〈資料写真〉)
イスラエル側は、同国史上最悪の襲撃事件となった10月7日の攻撃を首謀したのがシンワル氏だと断定し、同氏を「死刑囚」と呼んでいる。奇襲があった同日以降、姿を見せていない。
フランス・パリにあるアラブ政治研究センターのレイラ・スラ氏は、恐らくは1~2年の計画期間を要したハマスの奇襲攻撃について、「皆の虚を突き、パワーバランスを変えた」と分析する。
シンワル氏と獄中で数年を共に過ごしたという、アブアブダラと名乗るハマスのメンバーによれば、シンワル氏は「卓越した」安全保障の運用家だという。
アブアブダラ氏は2017年、シンワル氏がガザ地区指導者に選出された後、AFPの取材に対し、「シンワル氏は最大限の冷静さで判断を下すが、ハマスの利益を守ることに関しては絶対に譲歩しない」と語っていた。
■内通者を処刑
イスラエル軍報道官はシンワル氏を「悪魔の顔」と呼び、「死刑囚」だと宣告した。
シンワル氏はガザ地区南部のハンユニス難民キャンプで生まれ、第1次インティファーダ(反イスラエル闘争)が始まった1987年にアハメド・ヤシン師が組織を創設した頃にハマスに参画した。
シンワル氏は翌年にハマスの治安機関を設立。イスラエルに情報提供したとされるパレスチナ人を見つけ出し、処刑を含めて容赦なく制裁を加える情報部門を率いた。
イスラエルのメディアに掲載された治安当局者の尋問記録によれば、シンワル氏はハンユニスの墓地で内通者の首をスカーフで絞めたと自白している。
ガザのイスラム大学を卒業したシンワル氏は、23年間にわたって収監されたイスラエルの刑務所で完璧なヘブライ語を習得し、イスラエルの文化と社会に精通しているといわれる。
イスラエル兵2人を殺害したとして終身刑4回の刑に服していたが、2011年にイスラエル軍のギラド・シャリート曹長との交換で、パレスチナ人1027人のうち最高位の人物として釈放された。
釈放後にはハマスの軍事部門、イザディン・アルカッサム(カッサム旅団)の幹部を務めた。前任者はハマスが世界に対して穏健な姿を見せるよう努めていたのに対し、シンワル氏はより暴力的な手段でパレスチナ問題への関心を高めようとした。
■過激だが実利的な面も
シンワル氏は、ガザ地区とイスラエル占領地であるヨルダン川西岸、イスラエルが併合した東エルサレムでの単一のパレスチナ統治体制を支持するようになった。
シンワル氏がガザ地区指導者に選ばれた2017年、ハマスは初めて1967年以前の境界線に基づくパレスチナ国家樹立を原則受け入れた。ただし、イスラエルの存在を認めず、歴史的なパレスチナ全域を「解放」するという最終目標は堅持した。
英シンクタンク「欧州外交評議会」によれば、シンワル氏は2006年の評議会選挙後に派閥闘争を繰り広げたパレスチナ解放機構主流派のファタハとの和解を妨害する者に制裁を加えるとの立場を示していた。
ハマスとファタハの和解は依然不安定な状況にあるものの、パレスチナ人受刑者の釈放によりハマスのヨルダン川西岸での人気は急上昇している。
前出のスラ氏によれば、シンワル氏は「軍事政策に関する立案では過激であり、政治では実利的」な立場を取ってきた。「軍事力の行使そのものが目的ではなく、(イスラエルとの)交渉を実現するために軍事力の行使を支持している」という。
シンワル氏は、カッサム旅団のモハメド・デイフ最高司令官と同様、2015年に米政府の「国際テロリスト」の最重要指名手配リストに加えられた。
治安筋によると、シンワル氏とデイフ氏は共に、イスラエルの爆撃に耐えるよう建設されたガザ地区の地下トンネルネットワークに潜伏している。
シンワル氏を「見つけ出して排除する」と宣言したイスラエルのヨアブ・ガラント国防相は、ガザ住民に対し「もしわれわれよりも先に(シンワル氏)を見つけ出したら、戦争を早く終結させることになるだろう」と述べ、同氏の引き渡しを求めた。【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕(2023/12/05-16:58)
イスラエル側は、同国史上最悪の襲撃事件となった10月7日の攻撃を首謀したのがシンワル氏だと断定し、同氏を「死刑囚」と呼んでいる。奇襲があった同日以降、姿を見せていない。
フランス・パリにあるアラブ政治研究センターのレイラ・スラ氏は、恐らくは1~2年の計画期間を要したハマスの奇襲攻撃について、「皆の虚を突き、パワーバランスを変えた」と分析する。
シンワル氏と獄中で数年を共に過ごしたという、アブアブダラと名乗るハマスのメンバーによれば、シンワル氏は「卓越した」安全保障の運用家だという。
アブアブダラ氏は2017年、シンワル氏がガザ地区指導者に選出された後、AFPの取材に対し、「シンワル氏は最大限の冷静さで判断を下すが、ハマスの利益を守ることに関しては絶対に譲歩しない」と語っていた。
■内通者を処刑
イスラエル軍報道官はシンワル氏を「悪魔の顔」と呼び、「死刑囚」だと宣告した。
シンワル氏はガザ地区南部のハンユニス難民キャンプで生まれ、第1次インティファーダ(反イスラエル闘争)が始まった1987年にアハメド・ヤシン師が組織を創設した頃にハマスに参画した。
シンワル氏は翌年にハマスの治安機関を設立。イスラエルに情報提供したとされるパレスチナ人を見つけ出し、処刑を含めて容赦なく制裁を加える情報部門を率いた。
イスラエルのメディアに掲載された治安当局者の尋問記録によれば、シンワル氏はハンユニスの墓地で内通者の首をスカーフで絞めたと自白している。
ガザのイスラム大学を卒業したシンワル氏は、23年間にわたって収監されたイスラエルの刑務所で完璧なヘブライ語を習得し、イスラエルの文化と社会に精通しているといわれる。
イスラエル兵2人を殺害したとして終身刑4回の刑に服していたが、2011年にイスラエル軍のギラド・シャリート曹長との交換で、パレスチナ人1027人のうち最高位の人物として釈放された。
釈放後にはハマスの軍事部門、イザディン・アルカッサム(カッサム旅団)の幹部を務めた。前任者はハマスが世界に対して穏健な姿を見せるよう努めていたのに対し、シンワル氏はより暴力的な手段でパレスチナ問題への関心を高めようとした。
■過激だが実利的な面も
シンワル氏は、ガザ地区とイスラエル占領地であるヨルダン川西岸、イスラエルが併合した東エルサレムでの単一のパレスチナ統治体制を支持するようになった。
シンワル氏がガザ地区指導者に選ばれた2017年、ハマスは初めて1967年以前の境界線に基づくパレスチナ国家樹立を原則受け入れた。ただし、イスラエルの存在を認めず、歴史的なパレスチナ全域を「解放」するという最終目標は堅持した。
英シンクタンク「欧州外交評議会」によれば、シンワル氏は2006年の評議会選挙後に派閥闘争を繰り広げたパレスチナ解放機構主流派のファタハとの和解を妨害する者に制裁を加えるとの立場を示していた。
ハマスとファタハの和解は依然不安定な状況にあるものの、パレスチナ人受刑者の釈放によりハマスのヨルダン川西岸での人気は急上昇している。
前出のスラ氏によれば、シンワル氏は「軍事政策に関する立案では過激であり、政治では実利的」な立場を取ってきた。「軍事力の行使そのものが目的ではなく、(イスラエルとの)交渉を実現するために軍事力の行使を支持している」という。
シンワル氏は、カッサム旅団のモハメド・デイフ最高司令官と同様、2015年に米政府の「国際テロリスト」の最重要指名手配リストに加えられた。
治安筋によると、シンワル氏とデイフ氏は共に、イスラエルの爆撃に耐えるよう建設されたガザ地区の地下トンネルネットワークに潜伏している。
シンワル氏を「見つけ出して排除する」と宣言したイスラエルのヨアブ・ガラント国防相は、ガザ住民に対し「もしわれわれよりも先に(シンワル氏)を見つけ出したら、戦争を早く終結させることになるだろう」と述べ、同氏の引き渡しを求めた。【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕(2023/12/05-16:58)
2023.12.05 16:58World eye
Yahya Sinwar-- Hamas Gaza leader and 'dead man walking'
After a career in the shadows, spent in Israeli prisons and the internal security apparatus of Hamas, Yahya Sinwar rose to lead the Islamist movement in the Gaza Strip.
Now, Israeli officers say, he is a dead man walking.
Sinwar stands accused of masterminding the group's October 7 attacks, the worst in Israel's history, which officials say left around 1,200 people dead and about 240 dragged back to Gaza as hostages.
It was probably a year or two in the planning, took everyone by surprise and changed the balance of power on the ground, said Leila Seurat of the Arab Centre for Research and Political Studies (CAREP) in Paris.
The ascetic 61-year-old has not been seen since October 7. Known for his secrecy, Sinwar is a security operator par excellence, according to Abu Abdallah, a Hamas member who spent years alongside him in Israeli jails.
He makes decisions in the utmost calm, but is intractable when it comes to defending the interests of Hamas, Abu Abdallah told AFP in 2017 after his former co-detainee was elected Hamas's leader in Gaza.
- Punishing collaborators -
After October 7, Israeli military spokesman Lieutenant Colonel Richard Hecht called Sinwar the face of evil and declared him a dead man walking.
Born in the Khan Yunis refugee camp in southern Gaza, Sinwar joined Hamas when Sheikh Ahmad Yassin founded the group around the time the first Palestinian intifada began in 1987.
Sinwar set up the group's internal security apparatus the following year, and went on to head an intelligence unit dedicated to flushing out and mercilessly punishing -- sometimes killing -- Palestinians accused of providing information to Israel.
According to a transcript of an interrogation with security officials published in Israeli media, Sinwar professed to have strangled an alleged collaborator with a keffiyeh scarf in a Khan Yunis cemetery.
A graduate of the Islamic University in Gaza, he learned perfect Hebrew during his 23 years in Israeli jails, and is said to have a deep understanding of Israeli culture and society.
He was serving four life terms for the killing of two Israeli soldiers when he became the most senior of 1,027 Palestinians released in exchange for Israeli soldier Gilad Shalit in 2011.
Sinwar later became a senior commander in the Ezzedine al-Qassam Brigades, the military wing of Hamas, before taking overall leadership of the movement in Gaza.
While his predecessor had encouraged efforts by Hamas to present a moderate face to the world, Sinwar has preferred to force the Palestinian issue to the fore by more violent means.
Gaza's Hamas government says Israel's withering aerial and ground assault launched in response to the October 7 attacks has killed nearly 15,000 people in the Palestinian territory, most of them civilians.
- 'Radical and pragmatic' -
Sinwar has come to endorse the idea of a single Palestinian administration, bringing together the Gaza Strip, the occupied West Bank -- controlled by Mahmud Abbas's Fatah party -- and annexed east Jerusalem.
The same year he was elected, Hamas for the first time accepted in principle a Palestinian state in the pre-1967 borders, while not recognising Israel and retaining the ultimate goal of liberating all of historic Palestine.
According to the European Council on Foreign Relations, a think tank, Sinwar has vowed to punish anyone obstructing reconciliation with Fatah, the rival political movement with which Hamas engaged in factional fighting after elections in 2006.
That coming together remains elusive, but the prisoner releases resulting from the current truce agreement with Israel have seen Hamas's popularity soar in the West Bank.
Sinwar has pursued a path of being radical in military planning and pragmatic in politics, according to Seurat.
He doesn't advocate force for force's sake, but to bring about negotiations with Israel, she said.
The Hamas chief was added to the US list of the most wanted international terrorists in 2015, as was Mohammed Deif, the current commander of the Ezzedine al-Qassam Brigades and another alleged October 7 mastermind.
Security sources outside Gaza say that both Sinwar and Deif have taken refuge in the network of tunnels built under the territory to withstand Israeli bombs.
Vowing earlier this month to find and eliminate Sinwar, Israeli Defence Minister Yoav Gallant urged Gazans to turn Sinwar in, adding if you reach him before us, it will shorten the war.
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