辺野古移設、改めて「ノー」 本土復帰50年目の選択―政府と沖縄、広がる溝
本土復帰50年の節目の年に行われた沖縄県知事選。県民は米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に「ノー」の判断を改めて示した。自民、公明両党は8年ぶりの県政奪還を目指したが、はね返された形。民意を背に移設阻止を貫く県に対し、政府は振興予算の削減など「冷遇」も辞さない構えだ。双方の溝がかつてなく広がる。
◇民意
「県民はやはり辺野古反対だ。民意は変わっていない」。再選から一夜明けた12日午前、玉城デニー知事は那覇市の知事公舎で記者団にこう強調した。
玉城氏は、「オール沖縄」の旗の下に保革を糾合し、1期目の終わりごろの2018年8月に亡くなった故翁長雄志前知事の後継者とされた。翌月の知事選で初当選。19年2月の県民投票でも示された「辺野古反対」の民意を武器に、国と対峙(たいじ)してきた。
沖縄は復帰半世紀を経た今もなお在日米軍専用施設・区域の約7割が集中する。今回の知事選は、普天間移設に関して「県内のたらい回し」に対する反感が根強いことを改めて浮き彫りにした。
「今後も努力しなければいけない」。岸田文雄首相は12日昼、自民党の森山裕選対委員長との昼食の際にこう述べ、県民の理解を得るよう取り組む意向を示した。
沖縄は今年、重要な選挙が相次ぐ。その中で知事選は「天王山」と位置付けられた。
自公側は四つの市長選で連勝したが、7月の参院選を落とし、勢いが止まる。新人で前宜野湾市長の佐喜真淳氏は、辺野古移設の賛否を曖昧にした前回から戦術を転換。「容認」の立場を鮮明にし、政府と一体で経済振興を図る考えをアピールしたが、またも県民に浸透しなかった。
自民党関係者は、同党にも所属していた下地幹郎元衆院議員の出馬が敗因だと分析する。「保守が割れては勝てないと皆が思った」と語り、陣営の士気低下に言及した。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題が影響したとの見方も広がる。佐喜真氏は教団関連の会合に出席したことが判明し、釈明に追われた。自民党の森山氏は記者団に「気にする県民がいたのは間違いない」と指摘。立憲民主党幹部は「旧統一教会をめぐる首相の説明不足が勝利につながった」と語った。
◇既成事実化
18年12月に政府が始めた辺野古沿岸の土砂投入は着々と進み、一部で「陸地化」が完了した。埋め立て予定海域で軟弱地盤が見つかったが、政府は米国と合意した現行計画を推進する基本姿勢を一切変えていない。
20年4月に軟弱地盤改良の設計変更を申請。玉城氏は承認しなかったが、国はこの処分を今年4月に取り消し、またも法廷闘争に発展した。不承認は玉城氏にとり「最後のカード」とも言える権限。ただ、辺野古をめぐる訴訟は全て県が敗訴しており、政府は当面、軟弱地盤を避けて工事を進め、訴訟が決着すると見込まれる来夏以降に改良工事に着手する青写真だ。
玉城氏周辺は「今のところ効果的な対抗策は見当たらない」と漏らす。埋め立てが既成事実化していけば、玉城氏の求心力低下につながる可能性がある。
だが、辺野古移設計画はそもそも不透明な部分が多い。13年4月の日米合意で普天間返還は「22年度以降」とされたが、地盤改良工事の追加で30年代以降にずれ込むことになった。総工費も膨張する見込みだ。
埋め立て用の土砂は、沖縄戦の激戦地となった本島南部で採取する計画。戦没者の遺骨が混入する恐れが指摘されており、県民の間にはやり切れなさも広がる。
「予算は減らす。沖縄の優先順位は下がる」。玉城氏の再選を受け、ある首相官邸関係者はこう語り、県側をけん制した。振興予算をめぐり県は3000億円台を求めたが、23年度予算の概算要求は2798億円。新型コロナウイルス禍で観光業を軸とする沖縄経済は打撃を受けており、地元ではこうした政府の手法に不満も出そうだ。「聞く力」を看板にする首相の掛け声と裏腹に、政府と沖縄の間には冷たい風が吹く。(2022/09/12-21:41)
FOCUS: Okinawa Residents Say No to Relocation Plan Again
Residents of Okinawa Prefecture reiterated their opposition to the planned relocation of a key U.S. base within the southernmost Japan prefecture in Sunday's gubernatorial election, held in the year that marked the 50th anniversary of the prefecture's return to Japanese rule from post-World War II U.S. occupation.
Denny Tamaki, who opposes the base relocation plan promoted by the Japanese government, won re-election as Okinawa governor, while the attempt by the ruling Liberal Democratic Party and its coalition partner, Komeito, to regain control of the prefectural government for the first time in eight years through the election ended in vain.
The central government is believed to be ready to give the prefectural government the cold shoulder including by decreasing its budget for Okinawa development.
Meanwhile, the prefectural government will continue to strive to block the state-led plan to relocate the U.S. Marine Corps' Futenma air station in a heavily populated area in the city of Ginowan in Okinawa to the Henoko coastal district in Nago, another Okinawa city.
The gap between the prefectural and central governments is now apparently wider than ever.
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