沈没観光船を引き揚げへ　２１日から作業着手―船内に行方不明者見つからず

　北海道・知床半島沖で２６人が乗った観光船「ＫＡＺＵ　I（カズワン）」が沈没した事故で、国土交通省は２０日、船体の引き揚げ作業を２１日から始めることを決めた。早ければ２３日にも海上で船体が確認できる状態になる見込み。
　斉藤鉄夫国土交通相は２０日開かれた対策本部会議で、「行方不明者の捜索、事故原因の究明と徹底的な責任追及、再発防止策の検討を目的に船体の引き揚げを開始してください」と指示した。
　国交省によると、船体に器具を取り付けるなど２１日から引き揚げ作業に着手する。２２日に船体を海面近くまでつり上げ、２３日に作業台船上に移動させる予定。ただ、２２日は現場海域はしけが予想されており、スケジュールはずれ込む可能性があるという。
　事故では依然として１２人が行方不明となっており、現場海域では「飽和潜水」による船内捜索を１９日に続いて実施した。高い水圧に体を慣らした潜水士３人がカズワンの沈む水深約１２０メートルの海底付近まで降下して捜索に当たったが、第１管区海上保安本部（小樽市）によると、不明者発見につながる手掛かりは得られなかった。
　潜水士は捜索に加え、船体の状況も確認。大きな損傷は見当たらなかったことから、国交省は引き揚げ可能と判断し、船内捜索を依頼した専門業者と約１億４０００万円で追加契約。これまでの費用と合わせると、総額約１０億円に上る。
　国交省によると、費用は国が負担し、運航会社に請求しない。原因究明や再発防止など行政目的であり、法律上は運航会社に引き揚げ義務がないため、請求は難しいと判断したという。
　同本部などによると、北方領土の国後島西岸で２０日までに、新たに１人の遺体が見つかった。性別や年齢は不明で、１９日にロシア側から外務省を通じて同本部に連絡があり、家族に伝えられた。国後島では６日にも女性の遺体が発見され、同本部は沈没事故の不明者の可能性があるとみている。（2022/05/20-21:30）

Divers on Friday continued search inside and outside the Kazu I tour boat, which lies on the seabed at a depth of about 120 meters after sinking off the Shiretoko Peninsula in Hokkaido, northernmost Japan, about a month ago.
   The boat carrying 26 passengers and crew members sank on April 23. Of them, 14 have been found and confirmed dead while the 12 others remain missing.
   The search using saturation diving, which started Thursday, is aimed at finding the missing people and clues to them, and examining whether the boat can be salvaged.
   According to sources including the Japan Coast Guard's first regional headquarters, another body has been found, on the west coast of Kunashiri, one of the four Russian-held northwestern Pacific islands claimed by Japan. The Japanese Foreign Ministry was informed about the discovery of the body by the Russian side on Thursday. A woman's body was found on the coast of the island May 6.
   The bodies could be those of two of the 12 missing people, according to the JCG.