2022.03.10 07:10Nation

語り部を「生業」に 伝承担い手、次世代へ―資金支援へ動き・東日本大震災

 発生から11年を迎える東日本大震災の被災地では、持続的な伝承活動の在り方を模索する動きが広がっている。資金面や後継者不足が大きな課題で、自治体も支援に乗り出した。
 宮城県東松島市の一般社団法人「防災プロジェクト」の語り部ガイド中井政義さん(57)は、津波で自宅や職場が全壊。2012年10月から「生業」として語り部を始めた。高額な料金設定のため当初は不安もあったが、「時間も体力も使い、使命感を持ってやっているのでクレームはない」。
 これまで約3万8000人が中井さんの話に耳を傾けたという。新型コロナウイルス流行の影響で活動機会は減ったが、コンサルティングの職歴を生かし、企業の防災に関する事業継続計画(BCP)のサポートを開始。「語り部を続けるためにも、新しい事業に挑戦したい」と意気込む。
 県は21年4月、復興支援・伝承課を新設した。阿部博敬副参事は「語り部は年配者が多く、10~20年後にどう若い世代につなぐかが課題だ」と話す。同課によると、県内の語り部はほぼボランティアで、交通費や多少の謝礼が支払われるケースもあるが、生計を立てられるほどではない。
 岩手県釜石市の久保力也さん(27)は、復興支援をきっかけに神戸市から移住。昨春、防災教育や企業向け研修などを行う株式会社「8kurasu(ハチクラス)」を設立した。当初はコロナ禍で講演ができず、ほとんど利益が出なかったが、オンライン研修などで経営を軌道に乗せた。
 久保さんは「若者を伝承活動に呼び込むには時間に対する対価が必要。講演の準備にも数時間かかり、ボランティアでは限界がある」と指摘する。ただ、個々の語り部が予算交渉を行うのは容易ではなく、「今後はコーディネーターのような人材も必要だ」と語る。
 宮城県石巻市では、今夏にも語り部や伝承団体の連携組織「震災伝承推進協議会(仮称)」を設立し、後継者不足などの課題について協議する方針。同県気仙沼市も昨年末から、ふるさと納税で伝承活動に要する500万円の寄付を募るなど、語り部の資金援助に動きだしている。(2022/03/10-07:10)

2022.03.10 07:10Nation

11 Years On: Moves to Keep Stories of Disaster Alive Spreading


With 11 years passing since the March 11, 2011, powerful earthquake and tsunami, moves to seek sustainable ways of handing down stories of the catastrophe are spreading in afflicted areas.
   As two obstacles for such activities are financial resources and successors, local governments concerned have started to offer a helping hand.
   Masayoshi Nakai, 57, a professional "kataribe" storyteller of Bosai Project, an organization working for disaster management in the city of Higashimatsushima in Miyagi Prefecture, northeastern Japan, had his home and workplace destroyed by the tsunami.
   He started to make a living from working as a kataribe in October 2012.
   Nakai was initially worried about reaction from customers because the fees he set for his services were relatively high. But he says, "I've received no complaints as I use my time and energy, and do my job with a sense of mission." Around 38,000 people have listened to his story so far.

最新ニュース

写真特集

最新動画