「誰かが話さないと」　被害者父、語り続ける―相模原殺傷事件から５年

　相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」で２０１６年、入所者ら４５人が殺傷された事件は２６日で発生から５年となった。事件で重傷を負った尾野一矢さん（４８）＝神奈川県座間市＝の父、剛志さん（７７）＝同＝は「誰かが話さないと」との思いで事件について語り続けてきた。
　一矢さんは事件で首や腹などを刺され、一時は生死をさまよった。剛志さんは当初、事件について話すのがつらかったが、「息子は九死に一生を得て戻ってきた。世間の人に事件の真相を聞いてもらいたい」との一心で、事件から１年を過ぎた頃から公判傍聴のほか、全国各地を回って講演活動を続けてきた。
　この５年の間に大きな変化もあった。２０年夏、一矢さんは２０年以上暮らした施設を出て、座間市内で１人暮らしを始めた。ヘルパー１５人による持ち回りの介助を受けながら、自立への一歩を踏み出した。それから１年近くがたち、ヘルパーと近所のスーパーで買い物をしたり、好きな陶芸を楽しんだりする一矢さんの姿に「介護者の人と一緒に（人生を）走っている」と剛志さんは目を細める。
　１人暮らしを始めてから大きなトラブルもなく、１週間から１０日ごとに帰省しても、一矢さんは自宅に帰りたがるという。剛志さんは「ありがたいような、寂しいような」とはにかむ。
　剛志さんは事件から５年がたっても、「もっと事件を知ってほしい」という思いで、講演活動などを続けていく方針だ。「障害を持つ人もそうでない人も助け合える社会をつくることができるよう、命ある限り話していきたい」と語った。
　事件は１６年７月２６日に発生。元職員の植松聖死刑囚（３０）が園に侵入し、入所者１９人を包丁で殺害し、職員を含む２６人に重軽傷を負わせた。植松死刑囚は２０年３月、一審で死刑判決を言い渡され、弁護人の控訴を取り下げ刑が確定した。２６日は神奈川県の黒岩祐治知事が園で献花するほか、一般の献花も受け付ける。（2021/07/26-07:01）

With Monday marking the fifth anniversary of a knifing rampage at a care home for disabled people in the eastern Japan city of Sagamihara, the father of one of the 45 people who were killed or injured in the stabbings is determined not to let the memories of the incident fade away.
   Kazuya Ono, 48, hovered between life and death after being stabbed in the neck and abdomen in the rampage at the care home, Tsukui Yamayuri-en, in the city in Kanagawa Prefecture, south of Tokyo.
   In the small hours of July 26, 2016, Satoshi Uematsu, a former Tsukui Yamayuri-en worker, broke into the facility and stabbed 19 residents to death while injuring 26 other people, including staff members. His death sentence became final in March last year.
   Kazuya's father, Takashi, 77, said that it was hard for him to talk about the incident at first.
   Out of sheer desire to let people know about the rampage in which his son made a narrow escape from death, Takashi started attending the hearings of Uematsu's trial and began traveling around Japan to give lectures after a year had passed since the stabbings.